ニュース速報

ビジネス

日銀、金融政策は現状維持の公算 物価上振れでも2%目標には距離

2023年06月09日(金)17時01分

 6月9日、日銀は15―16日に開く金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決める公算が大きい。写真は日銀。都内で2016年9月撮影(2023年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 9日 ロイター] - 日銀は15―16日に開く金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決める公算が大きい。企業の価格転嫁の広がりや春闘での高い賃上げ率を受け、物価上振れの可能性を指摘する声がある一方で、基調的な物価上昇率は2%目標までまだ距離があるとの見方が根強い。賃金上昇を伴う物価目標の持続的・安定的な実現に向け、粘り強く金融緩和を続ける方針を改めて確認するとみられる。

<物価見通し、上振れの指摘も>

日銀は国内景気が「持ち直している」との現状判断を維持する見通し。政府が新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げたことで人流が回復。海外からの観光客も戻ってきている。

物価高が消費の重しになっているものの、ペントアップ需要の持続や賃上げが消費を下支えするとの期待感が日銀では出ている。設備投資も堅調で、1―3月期の実質国内総生産(GDP)2次速報の上方修正の主要因となった。

輸出は自動車中心に持ち直しているものの、生産はIT関連を中心に弱めになっている。輸出・生産は「横ばい圏内の動き」との判断を据え置く可能性がある。

日銀は4月の展望リポートで、2023年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の政策委員の見通し中央値を前年度比プラス1.8%とし、コアCPIの前年比は今年度半ばにかけてプラス幅を縮小していく可能性が高いとした。

15日からの決定会合では展望リポートを議論しないが、値上げの継続、春闘での高い賃上げ率を踏まえ、日銀では物価見通しの上振れを指摘する声が出ている。ただ、値上げや今年の春闘といった国内事情を踏まえても、基調的な物価上昇率は2%までまだ距離があるとの見方が根強い。

米連邦準備理事会(FRB)の急速な利上げに伴う米経済の下振れリスクや欧米の金融不安などにより、先行きの経済・物価見通しの不確実性は依然として大きいとの見方が多い。

植田和男総裁は9日の国会答弁で、2%物価目標の持続的・安定的な達成には「まだ少し間がある」とし、「粘り強く金融緩和を継続していく」と強調した。

また、7月の金融政策決定会合で議論する展望リポートに向け、さまざまなデータや情報を丹念に精査していきたいと述べた。

<YCCも枠組み維持へ>

今回の決定会合では、イールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みも修正せず、10年金利の許容変動幅はプラスマイナス0.5%で据え置くとみられる。

1日に発表された5月調査の債券市場サーベイでは、市場機能度DIがマイナス圏ながら5期ぶりに改善した。3月に欧米の金融不安で国内の金利水準が低下し、イールドカーブの歪みは解消されている。昨年12月の変動幅拡大の1つの要因となった国債金利の指標性についても、日銀では、イールドカーブの歪みが是正された結果、回復したとの指摘が聞かれる。

足元の東京株式市場では日経平均株価が堅調に推移し、33年ぶりに3万2000円台を回復した。日銀では政策修正に動くことが市場のかく乱要因になることへの警戒感も根強い。

(和田崇彦 編集:石田仁志)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ナイキ、9─11月決算が予想上回る 利益率低下で

ワールド

フィンランド右派政党、「つり目」ポーズ投稿議員に厳

ワールド

EU首脳会議、ロシア凍結資産の活用協議 ベルギーな

ワールド

TikTok米事業、米投資家主導の企業連合に売却へ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中