ニュース速報

ビジネス

アングル:米S&Pが直近安値から20%上昇、新たな強気相場入りには異論も

2023年06月09日(金)15時15分

 6月8日、米株式市場では、S&P総合500種が8日の値上がりによって昨年10月12日に付けた終値ベースの直近安値からの上昇率が20%に達した。ニューヨーク証券取引所で5日撮影(2023年 ロイター/Brendan McDermid)

[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米株式市場では、S&P総合500種が8日の値上がりによって昨年10月12日に付けた終値ベースの直近安値からの上昇率が20%に達した。複数の市場参加者の話では、これは少なくとも数字上で、新たな強気相場の始まりを予告している。

S&P総合500種はハイテク株が主導し、0.6%高で取引を終えた。

ただ強気相場に入った、と必ずしも断定できないのは、強気相場と弱気相場には明確な定義が存在せず、規制当局や団体が宣言するわけではないからだ。例えば景気後退(リセッション)であれば、全米経済研究所(NBER)が正式に認定してくれる。

その中で最も一般的に受け入れられているのが、株価が直近安値から20%上がれば強気相場、直近高値から20%下がれば弱気相場という見方だが、さまざまな解釈の余地をはらんでいるのは間違いない。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのシニア・インデックス・アナリスト、ハワード・シルバーブラット氏は、「20%理論」は第一次大戦期間中など本当に昔から目にされてきたと指摘しつつ、強気や弱気を判断する上で未だにルールや規制面の権威が見当たらない点に問題があるとの見方を示した。

シルバーブラット氏によると、S&P総合500種の弱気相場はこれまで15回あり、最初に始まったのが1929年9月、今の局面が始まったのは昨年1月3日だ。

CFRAのチーフ投資ストラテジスト、サム・ストバル氏は、弱気相場の判断要素に時間を加味している。安値での推移が少なくとも7カ月続くことを条件とすれば、これでいったん20%ないしそれ以上値上がりした後、また急落する展開を誤って強気相場とみなしてしまうリスクを排除できるからだ。実際世界金融危機において、そうした短期間での乱高下が発生した。

ストバル氏は「2008年11月20日にS&P総合500種は安値を記録し、翌年1月にかけて20%余り上昇したが、すぐに下げに転じ、3月9日までにさらなる安値に沈んだ。この流れは長期的な弱気相場の一時的な戻りだったと考えられる」と説明した。

リチャード・バーンスタイン・アドバイザーズの副投資責任者ダン・スズキ氏は5日のノートで、もっと段階的に判断する方法を披露している。足元の値上がりが全面的な強気相場に発展する可能性を秘めているのは確かだが、過去の例を踏まえれば当然の帰結とは到底言えないためだという。

スズキ氏が挙げた強気相場に共通する要素の一つは、さまざまなセクターにまたがって幅広い銘柄が上昇している構図だ。ところが今の上昇相場は、エヌビディアやメタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コムといったごく一握りの超大型株に値上がりが集中しているので、そうした要素は欠けている。

インガルス・アンド・スナイダーのシニア・ポートフォリオ・ストラテジスト、ティム・グリスキー氏も「現在は超大型ハイテク株の強気相場であるのは疑いない。(だが)株式市場全体が強気相場とは宣言しない。なぜならごく一部の銘柄だけが、われわれが言うところの強気相場圏で堅調に推移しているからで、持続的な強気相場と判断するほど十分な裾野の広さはない」と分析する。

ストック・トレーダーズ・アルマナックが強気・弱気相場の定義に際して依拠しているネッド・デービス・リサーチは、また全然違う考え方をしている。彼らによれば、循環的な強気相場入りには、ダウ工業株30種ないし、1700近い銘柄の均等加重方式で算出されるバリューライン・ジオメトリック指数が50営業日経過後に30%、もしくは155営業日経過後に13%上昇することが不可欠になる。

シルバーブラット氏自身は、S&P総合500種が直近安値から20%上がっただけでは、新たな強気相場が始まったとは言えないとの立場だ。S&P総合500種が昨年1月に付けた最高値を超えないうちは、あくまで「弱気相場における上昇」にとどまるという。

(Chuck Mikolajczak記者)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英CPI、2月は前年比+3.0%で1月と同率 中東

ビジネス

三菱マ、小名浜製錬所の銅製錬を停止へ 減損210億

ビジネス

キオクシアHD株、東芝とベインキャピタル系が一部売

ワールド

香港警察、黎智英氏の評伝販売で書店関係者4人逮捕=
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆保険」を達成した中国の医療保険の実態とは
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下位になった国はどこ?
  • 4
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 7
    スペイン王室、王妃と王女の装いに見る「母から娘」…
  • 8
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 9
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中