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焦点:米地銀に商業用不動産の重圧、見切り売りで損失増大も

2023年05月19日(金)19時26分

FILE PHOTO: People enjoy the Manhattan skyline during sunset, from the Top of the Rock observation deck, at Rockefeller Center, in New York, U.S., June 28, 2022. REUTERS/Athit Perawongmetha

[17日 ロイター] - 米国の不動産市況が悪化する中、多くの米地銀が規制で定められた不動産向け融資の上限数値を突破しており、商業用不動産(CRE)ローンの売却を検討せざるを得なくなるかもしれない。

地銀は、商業用不動産および建設市場への最大の貸し手だ。最近は不動産向け融資の基準を引き締めたり件数を減らしたりしており、特にシリコンバレー銀行など一連の地銀破綻後は、そうした動きを強めている。

金利の上昇を受け、多くの不動産企業は利払いに苦慮している。しかも、リセッション(景気後退)懸念が広がっているため、オフィス需要が減って不動産価格は下落している。

それでも不動産データ企業トレップのデータによると、いまだに多くの地銀で不動産向け融資が規制の上限を上回っている。

米連邦預金保険公社(FDIC)などが2006年に定めた指針では、銀行はCREおよび建設向け融資がそれぞれ総資本の300%と100%を超えると、当局からの監視が強化される。

16日に公表された4760行の公式規制データをトレップが調査したところ、763行はCRE向けと建築向けのいずれかが上限を超えていた。

そうした銀行の割合は、総資産10億─100億ドルの銀行で約30%、総資産100億─500億ドルの銀行で23%に及ぶ。

最近は大手銀行の過剰なCRE向け融資が指摘されているが、このデータを見ると、銀行セクター全体で問題が深刻化していることが分かる。

<貸し渋りも>

トレップの調査ディレクター、スティーブン・ブッシュボム氏は「(CRE)を巡る懸念が広がる中で、集中比率(規制で定められた比率)を超えている銀行は、融資継続を大いにためらいそうだ」と語った。

当局の指針では、上限を超えた銀行は特定のローン債権を売却するなど「リスク管理慣行を強化」するよう求められている。

地銀のパックウエストは3日、ローン債権の売却を検討していると発表した。トレップのデータによると、同行はCRE向け融資の比率が328%、建築向け融資の比率が126%と、いずれも上限を超えている。

FDICのグルーエンバーグ総裁は16日の議会証言で、現在のような市場環境が続けば、CREローンのポートフォリオは「厳しい状況に直面する」と警鐘を鳴らした。

過剰な融資を抱えた銀行は、CREローンの借り換えを断る可能性がある。当局の指針やアナリストの話を踏まえると、極端なケースでは既存ローンの一部もしくは全部を処分する銀行も出てきそうだ。

KBRA・クレジット・プロファイルのマネジングディレクター、マイク・ブロットショル氏は「テナントが一斉にオフィス面積を減らしているため、供給がだぶついて賃料に下押し圧力が働いている。つまりオフィス用不動産は現在、最悪の状況だ」と説明。「大きな銀行危機に見舞われたことで、こうした地銀の一部はCREローンの一部をバランスシートから切り離そうとするかもしれない」と語った。

投資プラットフォーム、ファンドライズのベン・ミラー最高経営責任者(CEO)によると、CREローン債権の需要は乏しいため、売り手は損失を引き受けざるを得ないかもしれない。

「銀行はひどい価格を提示されるだろう」とミラー氏は話した。

(Matt Tracy記者)

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