ニュース速報

ビジネス

焦点:中国の不動産業界、今年は需要が緩やかに回復へ

2023年01月09日(月)07時46分

 中国の不動産業界は今年、需要が緩やかに回復しそうだ。写真は2022年7月、北京で撮影(2023年 ロイター/Thomas Peter)

[香港 6日 ロイター] - 中国の不動産業界は今年、需要が緩やかに回復しそうだ。不動産市況は昨年大幅に悪化したが、今年は政府のてこ入れ策や「ゼロコロナ」政策の見直しが支えとなり、住宅販売の落ち込みは昨年よりも浅くなるとみられる。

ロイター調査によると今年の不動産販売は市場関係者8人の予想中央値が8%減。昨年は約25%減だった。経済活動、家計所得、消費者信頼感はいずれも下期の回復が見込まれる。

市場関係者は政府が景気対策の一環として年内に住宅ローン金利の引き下げや頭金規制の緩和など住宅需要喚起策を追加で打ち出すと見込んでいる。

政府が昨年12月にゼロコロナ政策を解除したことで年内の景気回復への期待が高まった。

しかしゼロコロナ策の見直しで感染が拡大しており、少なくとも今後数カ月は経済がさらに混乱し、家計は苦しくなる見通しだ。

<好転の兆し>

中国経済の4分の1を占める不動産業界は昨年、手ひどい打撃を受けた。資金繰りが悪化した開発業者は建設を完了できず、買い手の一部が支払いを拒否。広範なロックダウン(封鎖措置)や人員解雇も買い手の心理を悪化させ、昨年11月の不動産投資は前年比19.9%減と2000年の統計開始以来となる大幅な落ち込みを示した。

しかしUBSの首席中国エコノミスト、タオ・ワン氏は「2023年については、不動産政策が引き続き緩和され、コロナ後の経済再開が経済活動と家計所得の回復につながるため、不動産は販売と新規着工の両方が順次回復する」と予想する。

早くも好転の兆しが出ている。中国指数研究院の最近の発表によると、今年は新年3連休の新築住宅販売が前年比で20%余りも増加した。ただ北京や上海など大都市と比べて、ほとんどの小都市は市場心理が低迷したままだという。

<慎重な見方も>

不動産規制緩和などの動きを受けて、不動産開発業者の株価は昨年10月の安値から86%上昇。不動産業者のドル建て高利回り債の指数も11月3日の安値から2倍以上に上げている。

ガベカル・ドラゴノミクスは今年の不動産販売の伸びを5―10%と予想する。

一方シティは、住宅の価格期待や雇用の回復に時間がかかること、新規供給の減少を理由に不動産販売は21%減少すると見込んでいる。

T.ロウのポートフォリオマネジャーのシェルドン・チャン氏は、不動産市況の回復が「市場の織り込み、あるいは潜在的な織り込みよりも後ずれする可能性がある」と指摘。「住宅需要の底打ちは近いかもしれないが、まだそこまでは来ていない」とくぎを刺した。

中国版ベージュブックのチャイナ・ベージュブック(CBB)インターナショナルの調査リポートは「しかし昔の時代に戻ることは忘れるべきだ。不動産業界がどん底から抜け出すだけでも、2023年にかなりの政策支援が必要になる」と、さらに単刀直入な見方を示した。

<債務再編も>

住宅需要は今年緩やかな改善が期待されるものの、道のりは平たんではないと予想されている。依然として過去の行き過ぎが重荷になっているためだ。

不動産開発業者の多くは資金繰りの改善に苦しみ、新規の土地購入や海外債権者への返済に支障をきたしそうだ。

開発業者の多くが昨年、建設用地取引市場から姿を消しており、今年は販売するプロジェクトが減ってキャッシュフローが制約を受ける可能性がある。

さらにリフィニティブのデータによると、今年満期を迎えるオフショア負債は総額1410億ドルで、昨年の1207億ドルを上回る。

ボントベル・アセット・マネジメントのクレジットアナリスト、コスモ・ツァン氏は、この分野で債務再編が進むとみている。「まだ債務不履行(デフォルト)に陥っていなくても、今後数年以内に資本構造を再構築し、持続可能なものにする必要があると思われる企業がまだいくつかある。こうした企業の資本構成は持続不可能だ」とツァン氏は語った。

(Clare Jim記者、Xie Yu記者、Rae Wee記者)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

デンマーク首相、首都中心部で襲われる 男を逮捕

ワールド

焦点:フランスのムスリム系学校、イスラム主義締め付

ワールド

アングル:肥満症治療薬、有望市場の中国で競争激化の

ビジネス

米国株式市場=小幅安、雇用統計は堅調 9月利下げ観
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

  • 2

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    【独自】YOSHIKIが語る、世界に挑戦できる人材の本質…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    正義感の源は「はらわた」にあり!?... 腸内細菌が…

  • 8

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 9

    「私、息子を許せません」...16歳の息子が「父親」に…

  • 10

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 3

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 5

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 6

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 7

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 8

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中