ニュース速報

ビジネス

アングル:データで見る世界的景気後退リスク

2022年06月28日(火)06時56分

 6月24日、 ここ数十年で最も速い利上げサイクルと2桁に迫る物価上昇を受け、投資家は世界経済がリセッション(景気後退)に向かうか否かの判断材料になる市場の動きやデータを探している。ウオール街で2020年10月撮影(2022年 ロイター/Carlo Allegri)

[ロンドン 24日 ロイター] - ここ数十年で最も速い利上げサイクルと2桁に迫る物価上昇を受け、投資家は世界経済がリセッション(景気後退)に向かうか否かの判断材料になる市場の動きやデータを探している。

企業活動は鈍化し、多くの株価指数は「弱気」領域に入った。借り入れコストの上昇は企業や個人消費を圧迫している。

米連邦準備理事会(FRB)は75ベーシスポイント(bp)の利上げを決定し、たとえ成長率が低下したとしても物価上昇を抑制する姿勢を示した。

プリンシプル・グローバル・インベスターズのチーフストラテジスト、シーマ・シャー氏は「インフレ率は依然上昇している。これはFRBの一段の利上げ、しかもペースが上がることを意味する。景気後退懸念が増している」と指摘する。述べた。

世界銀行は現在、2022年の世界成長率を2.9%と予想している。

景気後退リスクを推し測る上で注目されているいくつかの指標の動きを以下に示した。

1:米国債のイールドカーブ

米国債のイールドカーブ(利回り曲線)は、特に2年債が10年債を上回った場合にリセッションの予兆とされる。

この2年・10年利回り差は5bp程度で、10年債のほうが高い順イールドと逆転状態を行ったり来たりしている。

懸念されるのは、8%を超えるインフレに直面したFRBが、経済活動を鈍化させるほど金融政策を引き締めることだ。

「FRBが狭い安全領域に着地する可能性は非常に低い」と、みずほのシニアエコノミスト、コリン・アッシャー氏は言う。

短期金融市場では、米利上げのピーク予想がやや下がり、現在は23年4月から7月の間に20bp程度の低下を予想している。

2:PMI

購買担当者景気指数(PMI)は、製造業やサービス業の在庫や新規受注などを基にした景況感を示し、将来の成長率を予測する信頼性の高い指標だ。

JPモルガンの世界総合PMIは5月は20年7月以来の低水準。新規受注は景況拡大と悪化の分かれ目である50を辛うじて上回った。

米国のPMIも低下し、6月は特に製造業が大幅に低下した。

みずほのアッシャー氏は「各国でPMIが50に向けて低下しているのは、コロナ後の好況が過去のものとなったことを示す」とみる。

3:コモディティー

幅広い用途があり好不況の指標とされる銅は6月24日までの週に7%下落し、20年3月の急落以来の大幅な下げを記録した。

銅の価格を金価格で割った「銅金レシオ」は1年半ぶりの低水準になり、経済が悪化していると思うなら銅を売って金を買えというサインが出ている。

国際原油価格の指標、北海ブレント原油も6月は11月以来の大幅な下落となった。

4:ジャンクセクターのストレス

企業、中でも信用力の低いセクターのストレスも警告信号となる。

投機的等級、いわゆる「ジャンク」級企業の資金調達コストは今年、米国でほぼ2倍の8.51%に達し、ユーロ市場では2.8%から6.8%に跳ね上がった。

BofAによれば、景気後退がコンセンサス予想となった場合、米ジャンク債のリスクプレミアムは平均600─650bp、最大700bpを超えるとみられる。現在は500bp前後で「景気後退の可能性を70%程度織り込んでいる」とBofAのアナリストは指摘する。

デフォルト(債務不履行)リスクが最も高い、格付けがトリプルC以下の債券のリスクプレミアムは1000bpを超えており、ストレスの兆候が強く出ている。

5:コンセンサスの変化

複数の大手銀行が景気後退の可能性が高まっていると指摘している。

ゴールドマン・サックスは、米国経済が来年にかけてリセッションに陥る可能性を30%(以前は15%)と予測し、モルガン・スタンレーは今後12カ月間に景気後退になる可能性を35%程度とみている。

シティは世界的な景気後退の可能性を50%近くと予想。データが予測をどの程度上回る、あるいは下回るかを測ったシティのエコノミック・サプライズ指数は欧米ともに大きく低下している。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ軍用輸送機、ジョージアで墜落 乗員約20人の

ビジネス

欧州外為市場=ドル下落、米雇用悪化を警戒

ビジネス

スイス、週内にも米と関税引き下げで合意の可能性=関

ワールド

トルコ検察、イスタンブール市長に懲役2000年求刑
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 10
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中