ニュース速報

ビジネス

英財務相、景気支援策の延長発表 法人税は23年に引き上げ

2021年03月04日(木)08時22分

 英国のスナク財務相は3月3日、予算演説を行い、新型コロナウイルス禍に伴う都市封鎖(ロックダウン)の影響を緩和するため、雇用支援策を延長すると発表した。予算案が入った赤いかばんを示すスナク氏(2021年 ロイター/John Sibley)

[ロンドン 3日 ロイター] - 英国のスナク財務相は3日、予算演説を行い、新型コロナウイルスの打撃を受けた経済を立て直すため、雇用支援策などを延長すると発表した。同時に、2023年に法人税率を約半世紀ぶりに引き上げる方針も示した。

スナク氏は、欧州で新型コロナのワクチン接種が順調に進んでいることから、国内経済は当初の想定よりも半年早い22年半ばまでにコロナ危機前の水準に戻るとの見通しを示した。

ただ、今後も国内総生産(GDP)比3%程度の経済への影響が予想されるため、650億ポンド(910億ドル)の追加景気対策が必要だと説明した。

景気を下支えするため、一時帰休労働者や自営業者への支援を9月末まで延長する。小売りや接客業、娯楽関連企業の固定資産税控除も6月末まで延長する。住宅購入者を対象した減税措置も継続する。

スナク氏は「コロナ危機に際し、国民と企業を支援するため引き続き必要なことは何でも行う」と表明。その上で「回復が軌道に乗れば財政再建に着手する必要があり、そのための計画について率直に話をしたい。今回の予算案は将来の経済の立て直しに向けた手始めになる」と語った。

法人税率は23年に現行の19%から25%に引き上げる。スナク氏は、政府がコロナ対策として企業に1000億ポンド超の支援を行っていることを考えれば増税は妥当と指摘。法人税率は引き上げ後も主要7カ国(G7)中で最も低いほか、最高税率が適用される企業は全体の1割程度にすぎないと述べ、理解を求めた。

<借り入れ予想を上方修正>

21/22年度の政府借り入れは2340億ポンドと、GDP比10.3%になるとし、当初予想の1640億ポンド(同7.4%)から大幅に引き上げた。

英債務管理庁(DMO)は今後1年2960億ポンドの国債を発行する計画。これは、ロイターがまとめた市場予想の2470億ポンドを大幅に上回る。

モルガン・スタンレーのエコノミスト、ヤコブ・ネル氏は「英国の財政規律は今までよりも緩み、投資に一段と焦点を当てるスタンスになった。こうした状況は米国やユーロ圏加盟国と同じだ」と説明した。

英予算責任局(OBR)の経済見通しは、21年のGDPが4%増と、昨年11月の5.5%から下方修正された。22年、23年、24年はそれぞれ7.3%増、1.7%増、1.6%増。20/21年度の財政赤字は対GDP比で17%と、当初の19%から引き下げられたものの、依然として高止まる見込み。21/22年度は10.3%。

*アナリストのコメントなどを追加しました

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジルGDP、第3四半期は前期比0.1%増に減速

ワールド

トランプ氏の首都への州兵派遣、高裁が継続容認 地裁

ワールド

米軍「麻薬船」攻撃、生存者殺害巡り民主・共和の評価

ビジネス

アマゾンと米郵政公社、「ラストマイル配送」契約更新
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中