ニュース速報

ビジネス

アングル:イエレン氏が景気対策を支持、長期的に「諸刃の剣」か

2021年01月21日(木)16時08分

 1月19日、米次期財務長官に指名されているイエレン前連邦準備理事会議長(写真)は、上院財政委員会の指名承認公聴会で、追加の新型コロナウイルス救済策に明白な支持を表明した。ワシントンで2017年12月撮影(2021年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ニューヨーク 19日 ロイター] - 米次期財務長官に指名されているイエレン前連邦準備理事会(FRB)議長は19日、上院財政委員会の指名承認公聴会で、追加の新型コロナウイルス救済策に明白な支持を表明した。これは投資家にとってはもろ刃の剣だ。リスク資産の上昇が続くとの楽観論をかき立てる一方で、政府債務が大幅に拡大することへの懸念も生む。

イエレン氏は議会に対し、新型コロナ救済策で「大きな行動」を呼び掛けた。バイデン次期米大統領は先週、1兆9000億ドルの景気対策案を示している。

景気対策は、コロナ禍で打ちのめされた経済を強く支えると期待されるが、ただでさえ巨額の財政赤字をさらに拡大させ、国債利回りを押し上げるとの懸念も聞かれる。既にさまざまな資産で膨らんでいるバブルを助長するとの見方もある。

バイデン氏の計画のうち、企業や富裕層を対象とする増税案についても、反応は入り乱れている。

スパータン・キャピタル・セキュリティーズの首席市場エコノミスト、ピーター・カーディロ氏は「イエレン氏は明らかに、景気が支援策を必要としていると感じている」とし、「(イエレン氏の説得で)上院は景気対策を可決するだろう。短期的にはプラスだが長期的にはマイナスな、新たな大型対策が実施されることになる」と話した。

今月の上院決選投票で民主党がかろうじて上院で優勢になり、より大型な財政出動のお膳立てができて以来、S&P総合500種株価指数は約2%上昇。特に景気回復時に値上がりが見込まれる銀行株や小型株の堅調ぶりが際立った。

イエレン氏は証言で、市場が抱く長期的な懸念にも触れた。同氏は議員たちに対し、今は財政支出を拡大し、あとで債務の問題に取り組む必要を訴えた。「長期的な財政軌道は懸念を呼び起こす。この点には目配りする必要がある。しかし米国は投資することも重要だ」とし、「今は金利が非常に低い環境にあることを意識にとどめることが大切だ」と続けた。

イエレン氏はまた、トランプ大統領が2017年に実施した法人税減税によって米企業の競争力が改善したことを認め、バイデン氏が法人税を17年以前の水準まで引き上げようとは提案していないと説明した。ただ、企業と富裕な個人が相応の負担を引き受けることも重要だと訴えた。

クレセット・キャピタル・マネジメントのジャック・アブリン最高投資責任者は「イエレン氏には、財務長官として押し進めたいと願うかなり進歩主義的な課題がある」と指摘。同氏は「冷静な政策立案者として振舞うと同時に、バイデン氏のかなり大規模な財政支出計画を受け入れるという、難しい綱渡りが必要になるだろう」と語った。

トランプ大統領は任期中、米国の輸出を促進するためにドルを安くすべきだと何度も訴えた。イエレン氏は19日の議会証言で為替政策について、ドルその他通貨の相場は市場が決めるべきだとの姿勢を示した。また諸外国が輸出競争力を高めるために人為的な為替操作を行った場合には、米国は反対すべきだと述べた。

BBHの為替ストラテジー・グローバル責任者、ウィン・シン氏は為替に関するイエレン氏の発言についてノートで、「政策がトランプ政権時から大幅にシフトするシグナルを送る」意図があったと解説。「いずれにせよ、市場はもうツイート絡みの相場変動に振り回されることはなくなる。これは良いことだ」と述べた。

(Lewis Krauskopf記者)

*見出しの脱字を補い再送します。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中