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アングル:米上場の中国企業、本国で重複上場模索へ 監査規制強化で

2020年12月06日(日)07時51分

 米国が同国で上場する外国企業の監査を強化し、従わなければ上場廃止にすることを打ち出したため、既に米国に上場している中国企業が香港や中国本土での重複上場を目指す動きが加速するとみられる。写真はニューヨーク証券取引所前で10月撮影(2020年 ロイター/Mike Segar)

[香港 3日 ロイター] - 米国が同国で上場する外国企業の監査を強化し、従わなければ上場廃止にすることを打ち出したため、既に米国に上場している中国企業が香港や中国本土での重複上場を目指す動きが加速するとみられる。

米下院は2日に「外国企業説明責任法案」を可決した。トランプ大統領がまもなく署名し、成立する見通しだ。外国企業が米上場企業会計監視委員会による監査点検を3年続けて拒むと、上場廃止となる。法案を推進する議員の標的は中国企業だ。中国当局はこれまで、外国の規制当局が中国の監査法人の検査に入るのを嫌がってきた。

市場分析情報サイト「スマートカルマ」を運営するエクイタス・リサーチのパートナー、スマート・シン氏は、今回問題になったような監査法人への検査を中国当局が容認することは考えにくいと指摘。今後はそうした企業が本国などで重複上場する動きが相次ぐと予想した。「中国当局が何らかの譲歩をするとしても、恐らくぎりぎり3年後になる」とし、それまでの間に大半の中国企業はいわば保険を掛ける措置として、香港などでの重複上場を目指すとみる。

既にこの2年で、そうした動きは始まっていた。米政府が華為技術(ファーウェイ)を制裁のブラックリストに載せるなど、米中関係の緊張が高まっていたためだ。リフィニティブのデータによると、今年は香港市場で12件、金額で過去最多となる191億ドル規模のこうした重複上場があった。電子商取引(EC)の京東商城(JDドットコム)、オンラインゲームの網易(ネットイーズ)、中国でファストフードチェーンの「KFC」や「ピザハット」のフランチャイズ権を持つヤム・チャイナなどだ。

もっともアナリストによると、バイデン次期政権で向こう3年間の間に、この問題で米中の規制当局が歩み寄るとの見方もある。

<当局の妥協>

中国外務省の華春瑩報道官は3日の記者会見で、米国が証券取引所の上場を政治問題化することに断固抗議すると表明。「法案は米資本市場への海外投資家の信頼を著しく損ね、最終的には米資本市場の国際的な地位と米国そのものの利益を傷つける」と主張した。

中国証券監督管理委員会(CSRC)は11月、米国に上場する中国企業に対して米中で共同監査する「具体的な計画」について、米規制当局と可能な限り早期に協議したいと表明した。

今回の法案が成立しても、株式公開を目指す中国企業の少なくとも一部は両国の譲歩の可能性を見込み、米国での上場を求めるとの見方もある。

法律事務所メイヤー・ブラウンのパートナー、ジェーソン・エルダー氏は、米市場の流動性の厚みと専門知識の強みを指摘し、「質の高い発行企業にとって、大きな企業価値評価を生み出す」と指摘した。

米中経済・安全保障問題検討委員会(USCC)の10月初めの発表によると、米市場に上場している中国企業は全217社、時価総額は2兆2000億ドルだ。

教育とデジタル技術の融合を目指す中国企業、一起教育科技は現在も、米ナスダックへの上場で2億8800万ドルを調達する計画を進めている。今回の法案が成立する事態になっても、中国企業にとって米市場の上場先としての魅力が損なわれていないことを示唆する。同社はナスダック上場で2億8800万ドルを調達する計画で、提出書類によると、これにより同社の企業価値は最大で22億ドルになる可能性がある。

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