ニュース速報

ビジネス

焦点:ダウ史上初の3万ドル突破、投資家からは冷静な声

2020年11月25日(水)08時29分

11月24日のニューヨーク株式市場で、ダウ工業株30種平均が大幅上昇し、史上初めて3万ドルの大台を突破した。ウオール街で6日撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)

[24日 ロイター] - 24日のニューヨーク株式市場で、ダウ工業株30種平均が大幅上昇し、史上初めて3万ドルの大台を突破した。新型コロナウイルスのパンデミックで経済が痛手を受け、なお数百万人の失業者が存在する中で、株式市場に心理的な追い風が吹いた形だ。

有望な新型コロナウイルス感染症ワクチンが相次ぎ登場したことや、米政権移行がより円滑に進みそうだとの見通しが、市場心理を上向かせている。ただプロの投資家にとって、3万ドル超えはそれほど重大な意味は持たない。

市場の熱気を共有したいと思いながらもまだ様子を見ている小口投資家にとって、今回の動きは参入を誘うきっかけになる可能性はあるものの、専門家は、ダウが2万ドルに達した2017年1月に比べれば印象度は薄く、話題を集めるニュースの見出しという以上の価値はほとんどないと言い切る。

インベスコのグローバル市場ストラテジスト、ブライアン・レビット氏は顧客に対して、ダウが3万ドルを突破したといってもそれ自体が持つ情報性は乏しい以上、過度にうれしがったり、心配したりするべきでないと助言した。

レビット氏は、ダウが2万ドルを付けた際でさえ、その約18年前の1万ドル突破に比べれば騒ぎ方は小さくなったと指摘。ハイテクバブルの崩壊や金融危機を経て、誰もが素直に祝福できない世界となっており、下手に喜ぶムードが出てこないことは、むしろ株高の持続という面ではこの上なく良い兆候ではないかとの見方を示した。

  普通の人から見れば、ダウ工業株30種平均は米国株を代表する指標としてなじみ深い。しかし大半の投資家にとって、30の大型株だけで構成される指数の重要度はかつてほどでなくなった。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、ダウ銘柄の合計時価総額は9兆2000億ドルで、連動して運用されている資金は282億ドルにとどまる。一方、S&P総合500種の時価総額はおよそ32兆ドル、連動資金は4兆6000億ドルに上り、市場全般のバロメーターとしてはこちらの方がはるかに大事だ。

TDアメリトレードのチーフ市場ストラテジスト、JJ・キネハン氏は、3万ドルというのは心理的な節目ではあるが、米国株全体が上昇しているという文脈でとらえるべきだと忠告する。これまでの株高をけん引してきたのは、パンデミック発生以降の巣ごもり生活が事業のプラスに働く巨大ITや、ネット通販、動画配信サービスといった企業だからだ。

キネハン氏は、足元の状況について重要なポイントとして、3月以降選好されてきたズームやペレトンズなどの銘柄が存在する一方、投資家が新たな資金の振り向け先を検討しつつあり、その中で過去数カ月間敬遠されていた銘柄が買われ、エネルギーや金融といったセクターがここにきて値上がりしている点だと解説した。

(Alden Bentley記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国経済運営は財政刺激が軸、中央経済工作会議 来年

ビジネス

スイス中銀、ゼロ金利を維持 米関税引き下げで経済見

ビジネス

EU理事会と欧州議会、外国直接投資の審査規則で暫定

ワールド

ノーベル平和賞のマチャド氏、「ベネズエラに賞持ち帰
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中