ニュース速報

ビジネス

ECB、12月に政策「再調整」 感染急拡大に対応

2020年10月30日(金)01時41分

欧州中央銀行(ECB)は29日の定例理事会で主要な政策変更を見送り、12月に追加対策を講じる可能性を示唆した。フランクフルトで2018年4月撮影(2020年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[フランクフルト 29日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は29日の定例理事会で主要な政策変更を見送り、12月に追加対策を講じる可能性を示唆した。

声明で「変化する状況に対応しながら、景気回復を支援し、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)がインフレ見通しに与える負の影響を相殺するような良好な金融条件を確保するため、必要に応じて政策手段を再調整する」と述べた。

パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い取り枠は1兆3500億ユーロに維持。中銀預金金利はマイナス0.5%に据え置いた。

ラガルド総裁は理事会後の記者会見で「理事会は、リスクは明らかに下向きに傾いているとの認識で完全に一致した」とし、「われわれは、パンデミックと感染拡大、および感染拡大抑制策が経済に及ぼす影響の重大性を認識している。こうした認識を踏まえ、次回理事会で政策措置を調整する必要があるとの見解で一致した」と表明。「各チーム、各委員会はすでに作業に取り掛かっている」とし、全ての政策措置の範囲、期間、規模が検証されると述べた。

PEPPの買取枠は現時点で7000億ユーロ分が残っており、ECBは現在、月額約1000億ユーロの資産買い入れを実施中。これにより借り入れコストは過去最低水準に押し下げられている。

ピクテ・ウェルス・マネジメントのストラテジスト、フレデリック・デュクロゼ氏は「PEPPが5000億ユーロ拡大されるとの6月以降の当社予想を踏襲するが、それ以上のことが同時に実施されるだろう」と述べた。

ラガルド総裁の発言を受け、ユーロは対ドルで急落し、0.7%安の1.166ドルで推移。国債利回りも低下した。

ただ、ECBにできることには明らかに限りがある。ラガルド総裁は、7500億ユーロの欧州連合(EU)復興基金案を巡る遅延があってはならないとし、金融政策は大規模な財政政策で補完される必要があるとの考えを改めて強調。「積極的で協調的な財政スタンスが引き続き重要」とし、状況の悪化に伴い各国政府が財政政策を拡充させることは特段驚くべきことではないと述べた。

その上で、年末までの感染拡大の制御状況でユーロ圏の第4・四半期の経済成長率が決まると指摘。「ECBは(感染拡大)第1波に対応した。第2波にも対応する」と語った。

欧州でも新型ウイルス感染拡大に歯止めがかかっておらず、28日にはフランスが12月1日までの約1カ月間、全土で再び都市封鎖(ロックダウン)を実施すると発表。ドイツも新たな規制案を策定した。

ECBの懸念要因であるインフレ期待の低下を受け、ブラックロック・インベストメント・インスティテュートのマクロ調査責任者、エルガ・バーチュ氏は「12月の見通しでは、インフレ率のECB目標への回帰がさらに遅れる可能性があることが示されるだろう」と述べた。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正-再送-米ワーナー、パラマウントの買収案を拒否

ビジネス

企業は来年の物価上昇予測、関税なお最大の懸念=米地

ビジネス

独IFO業況指数、12月は予想外に低下 来年前半も

ビジネス

EU、炭素国境調整措置を強化へ 草案を正式発表
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中