ニュース速報

ビジネス

米経済活動は控えめに拡大、部門間でばらつき=連銀報告

2020年10月22日(木)07時58分

米連邦準備理事会(FRB)は21日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、経済活動が10月初旬にかけて、わずかから控えめに拡大したものの、状況は部門によって相当異なるとの認識を示した。カリフォルニア州エンシニータスで7月撮影(2020年 ロイター/MIKE BLAKE)

[21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は21日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、経済活動が10月初旬にかけて、「わずか、あるいは控えめに」拡大したものの、状況は部門によって相当異なるとの認識を示した。

今回の報告では「ポジティブ」や「楽観的」といった表現を用いる地区が増え、9月の報告より明らかに前向きな内容となった。

ただ、新型コロナウイルスの感染拡大による景気低迷からの回復が一様でないことも示された。例えば、個人消費についてシカゴ地区連銀が「底堅く増加した」としたのに対し、ニューヨーク連銀は「横ばいになった」、カンザスシティー地区連銀は「やや減少した」と指摘した。

報告では「各地区とも見通しはおおむね楽観的かポジティブだが、かなりの不確実性を伴う」とした。

製造業活動は総じて緩やかに伸び、個人消費は増加したが、一部地区は小売支出が横ばいになり始めているとした。

安定した住宅需要が居住用不動産市場を支え、ローン需要を押し上げる一方、商業用不動産市場は多くの地区で、倉庫などを除いて一段と悪化した。

銀行部門の調査先は多くの地区で、向こう数カ月間で滞納率が増えるとの懸念を示した。

今回の調査は9月から10月9日にかけて12地区で実施された。

<労働市場の逼迫も>

雇用状況はまちまちとなった。様々な部門および地区で採用が続いたが、一時帰休が恒久化する傾向も根強い。

フィラデルフィア地区連銀が実施した新型コロナ関連調査では「一時帰休した従業員の呼び戻しは9月に5%となり、7月の13%から鈍化した。一方、恒久的な解雇をする企業の割合は7月の6%から9月は7%にやや上昇した。新たに一時帰休する企業の割合は6%から5%にやや低下した」としている。

全米の失業率が高止まりする中でも、大半の地区が労働市場の逼迫を報告した。賃上げや子育ての問題を抱える従業員に柔軟性を認めるなどして対応している企業もあるという。

賃金は大半の地区で小幅に増えた。低賃金、もしくは高需要な仕事に関して働き手が見つからないことに起因する場合が多かった。

物価は全ての地区で前回報告からやや上昇した。

投入コストは総じて消費者物価より速いペースで上昇した。消費者物価は全地区でやや伸びた。食品と自動車、家電製品は大幅に上昇した。

複数の地区は、多くの企業にとって新型コロナに関連する費用が引き続き増えているとした。

米国の新型コロナ新規感染者数は7月下旬から9月上旬にかけて減少した後、再び増加している。ロイターの分析によると、50州のうち34州が、少なくとも2週連続で新規感染件数が増えた。前週は29州だった。

気温が下がるとともに屋内で活動する消費者が増え、感染者が増加する可能性がある。夏の間、屋外の席を活用できたレストランやその他の事業は、再び売り上げが減少する可能性に懸念を示した。

米野党・民主党のペロシ下院議長は21日、11月3日の大統領選前に個人や企業を支援する対策で議会が合意することに「楽観的だ」と話した。ただ、共和党が合意するかどうかについて懐疑的な見方が残る。

FRBは9月の政策決定会合で、物価が中銀の目標である2%を一定期間、適度に上回る水準で安定し、労働市場が完全雇用状態に近づくまで金利をゼロ近辺に維持することを決めた。次回の連邦公開市場委員会(FOMC)は大統領選直後の11月4─5日に行われる。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

対イラン国連制裁、月内に復活の公算=仏大統領

ビジネス

マイクロソフト、ウィスコンシン州に2つ目のAIデー

ワールド

米年末商戦、増収率は3.6%に鈍化へ=マスターカー

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、最高値更新 足元は4万5
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中