ニュース速報

ビジネス

コロナショック、経済構造変化の可能性無視できず=日銀調査統計局長

2020年07月16日(木)20時17分

 7月16日、日銀の神山一成調査統計局長はロイターのインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大で「極めて大きなショックが加わるもとで、経済構造が変化している可能性が無視できない」と述べた。写真は2017年1月、都内で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 16日 ロイター] - 日銀の神山一成調査統計局長は16日、ロイターのインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大で「極めて大きなショックが加わるもとで、経済構造が変化している可能性が無視できない」と述べた。

経済構造の変化の有無を見極めるために「経済を単純化しすぎずに、これまでより少し複雑にみていかなければいけない」と指摘。政府・日銀による伝統的な経済指標のみならず、速報性の高い非伝統的データも含めて分析していくことが重要だと述べた。

<危機時は非伝統的データの速報性が強みに>

神山氏は2019年8月に調査統計局長に就任。就任後まもなくプロジェクトチームを立ち上げ、高頻度データをよりシステマティックに情勢判断に活用する仕組みを検討してきた。神山局長は「感染症だけではなく自然災害もあり、高頻度データに関するボードメンバーの関心も非常に高い」と話す。

「平時では経済見通しに基づくフォワードルッキングな政策運営が可能になるが、危機時で日々急速に経済情勢が変化するとうまくいかなくなる。経済の現状や見通しの不確実性も高まる」と指摘。高頻度データを含め、非伝統的データが持つ速報性が大きな強みを発揮するのは危機時だと述べた。

その上で神山局長は、伝統的な経済統計、非伝統的データ、日銀による企業ヒアリングなどを効果的に組み合わせて経済の実勢を見極めていくことが重要だと話した。「日本の場合、公的統計の質は高いので対外説明はこれに基づいて行う。その上で、状況把握を早くしたいと思った時に非伝統データを使っていくが、その際にはわれわれの企業ヒアリングで得ている知見を併せて判断していくことも必要」と述べた。

<需給ギャップ・物価の関係不透明に>

神山局長は「コロナ禍においては単純に需要が落ち込むだけではなく、供給サイドでも変化が起きている」と指摘。初期の時点では需要・供給ともに落ち、従来の手法で作成した需給ギャップではマクロ的な需給環境を的確に捉えるのは難しいと述べた。「今後経済活動が戻る中でも、需要と供給がどういうバランスで立ち上がるのか、需給ギャップ・物価の関係がどうなるかについても分からないことが多い」とし、さまざまな情報を基に日銀の仮説を検証する必要があると語った。

神山局長はより広範なデータを見る重要性を指摘しているものの、これまで重視してきている消費者物価指数(CPI)は「物価の基調を表しており、それを基に政策を運営するということに現状、問題が生じているとは思わない」と述べた。

ここに来て、海外当局もビッグデータの収集・分析の人員を増やし、情勢判断の高度化を進めている。神山局長は「日銀の取り組みのスピードは海外中銀対比遜色はないと認識している」と述べた。その上で、「高度な分析能力を有するリサーチャーを育成していくためにも、海外当局との情報交換はしっかりと行っていきたい」と語った。

(木原麗花、和田崇彦 編集:青山敦子)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中