ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、追加緩和でも債務・リスク警戒 FRBとは一線=関係筋

2020年04月08日(水)16時49分

 4月8日、関係筋によると、中国人民銀行(中央銀行)は、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた中国経済を支援するため、金融政策の緩和を強化するが、債務懸念や不動産リスクを踏まえ、米連邦準備理事会(FRB)のような急激な利下げや量的緩和は行わない見通し。写真は北京で4日撮影(2020年 ロイター/Tingshu Wang)

[北京 8日 ロイター] - 関係筋によると、中国人民銀行(中央銀行)は、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた中国経済を支援するため、金融政策の緩和を強化するが、債務懸念や不動産リスクを踏まえ、米連邦準備理事会(FRB)のような急激な利下げや量的緩和は行わない見通し。

人民銀の政策協議に関わる複数の関係筋によると、人民銀は、経済成長と雇用に欠かせない中小企業を中心に融資を強化し、資金調達コストを引き下げるほか、財政支出の拡大を支援する見込み。

人民銀は3日、中小銀行の預金準備率を引き下げると発表。また、金融機関の超過預金準備に適用する金利の引き下げも明らかにした。[nL4N2BR3M5]

関係筋によると、人民銀は景気支援のため、預金準備率やさまざまな貸出ファシリティー、市場金利や政策金利である最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)などを組み合わせて流動性供給を行う見込み。

関係筋の1人は「人民銀は金融緩和を強化するが、FRBのやり方にならうことは不可能だ。人民銀は段階的なアプローチを取り、ある程度の追加手段を残しておくだろう」と語った。

人民銀行と財政省はロイターのコメント要請に応じていない。

FRBは3月3日に50ベーシスポイント(bp)、同15日に100bpの緊急利下げを行い、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0─0.25%とするとともに、量的緩和プログラムを再開した。

関係筋によると、人民銀は4月20日にLPRを引き下げる可能性が高い。人民銀は3月30日に7日物リバースレポ金利を20bp引き下げている。1年物LPRの金利は現在4.05%。

また、消費者物価の上昇鈍化が見込まれる中、今後数カ月以内に預金基準金利を引き下げる可能性が高いという。

関係筋は、預金金利引き下げによって銀行は貸出金利を引き下げやすくなる可能性があるが、実質預金金利がすでにかなりマイナスとなっていることから、預金金利引き下げは政治的に微妙だと指摘する。

人民銀行は2015年10月以来、預金基準金利を1.5%で据え置いている。2月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比5.2%。

人民銀の劉国強副総裁は先週、借り入れコストを押し下げるために、預金基準金利を引き下げることは重大な行動だとし、消費者物価の高止まりや、金利引き下げによる人民元への下落圧力を考慮すると、慎重な検討が必要だとの考えを示した。[nL4N2BR1KW]

別の関係筋は「人民銀は預金準備率と金利の引き下げを続けるべきだ。しかし、これまでの刺激策の効果がまだ残る中で金融緩和が強力すぎれば、副作用を懸念しなければならない」と指摘。「不動産セクターに流入する資金が増えれば、不動産投機を招き、社会問題につながる」と警告した。

人民銀は2月以降、新型コロナ経済対策として数々の刺激策を講じてきた。だが、世界的金融危機を受けた2008年の216bpの利下げに比べるとまだ控えめだ。

<財政出動への傾斜>

関係筋によると、金融政策の限界を知る中国指導部はインフラ投資や消費の喚起のために財政面での刺激策をとる見通しだ。

低金利が政府の歳出計画を支援し、人民銀からのさらなる資金供給が銀行や企業による政府債購入を助けることで、「財政政策が(経済支援の)主役となり、金融政策は財政政策と積極的に協調する」という。

また、金融危機時の大規模景気刺激策で生じた大量の債務に悩まされた教訓から、中国政府は、今後の投資プロジェクトでは健全な資金運用に努めると関係者は指摘する。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、年内0.5%追加利下げ見込む 幅広い意見相

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRB、利下げ再開 雇用弱含みで年内の追加緩和示唆

ビジネス

FRB独立性侵害なら「深刻な影響」、独連銀総裁が警
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中