ニュース速報

ビジネス

アングル:新型コロナでマイナス金利のユーロ建て債券残高が急減

2020年04月02日(木)13時50分

 4月2日、利回りがマイナス圏にあるユーロ建て投資適格級社債の残高が大きく減少したことが1日、電子取引プラットフォームのトレードウェブのデータで明らかになった。写真は2017年4月撮影(2020年 ロイター/DAVID W CERNY)

[ロンドン 1日 ロイター] - 利回りがマイナス圏にあるユーロ建て投資適格級社債の残高が大きく減少したことが1日、電子取引プラットフォームのトレードウェブのデータで明らかになった。新型コロナウイルスの感染拡大が世界の市場に影響を及ぼした最新のシグナルとなった。

トレードウェブでは利回りがマイナスの投資適格級社債の時価総額が3月末時点で403億ユーロと、約3兆3000億ユーロの市場全体に占める比率はわずか1.21%になった。2月時点の1兆ユーロ強から大きく減り、トレードウェブの集計を開始した2016年以降で最小となった。

社債市場は新型コロナに伴うリスク資産の価格急落で打撃を受けている。iBoxxユーロ建て社債指数の利回りは3月上旬に一時、6年ぶりの高水準となる2.20%近くまで上昇、3月末は1.96%となった。

ステート・ストリート・グローバル・マーケッツのマクロ戦略責任者ティム・グラフ氏は、利回りがマイナス圏の債券減少について「債務水準や将来的な債務の持続可能性を巡る当局者発言よりも、社債市場の混乱および(社債と国債の)利回りスプレッドの拡大との関連性が強い」と述べた。

新型コロナの経済対策としての財政支出拡大を受け、国債のマイナス利回りも減少。トレードウェブでは3月末時点で利回りがマイナスのユーロ圏国債の時価総額は4兆0400億ユーロで、ユーロ国債市場に占める比率は約50%と、19年5月以降で最低になった。

ドイツは最大7500億ユーロ(8084億3000万ドル)規模の財政出動策を導入しており、13年以降で初めての新規借り入れを行う。ドイツの長期国債利回りは3月に15ベーシスポイント(bp)余り上昇。1カ月前に0%を大きく下回るマイナス圏にあった30年債利回りは0%近辺に上昇した。

米国も過去最大となる2兆2000億ドル規模の経済対策を実施する。アナリストによると、マイナス利回りの債券残高は世界全体で見ても、2月末の約14兆5000億ドルから現状、約12兆ドルに減少している。

モルガン・スタンレーのクロスアセット責任者であるアンドルー・シーツ氏は「今回の一連の借り入れ規模は極めて大きい。今年の新型コロナウイルスの感染流行拡大を理由に、中央銀行が5年後も債券市場を支えているとは考えにくい」と指摘した。

一方で、アナリストはここ数週間の大規模な金融緩和を受け、少なくとも短期的には国債利回りに下振れ圧力が働き続けると予想している。米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行はいずれも資産買い入れの規模を拡大。米財務省短期証券でさえ利回りが0%以下に沈んだ。

ステート・ストリートのグラフ氏は「現状は中央銀行が債券市場を軒並み強力に下支えしているため、マイナス利回りの債券残高は再び増え始めるだろう」と語った。財政赤字の急増を踏まえると国債は目先少々売られるかもしれないが、量的金融緩和が予見可能な将来にわたって無期限に続く可能性が高い中では、今回の市場の状況が転換点になるとはいえない」とも話した。

(Dhara Ranasinghe記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中