ニュース速報

ビジネス

アングル:原油処分売りでスポット価格低迷、アジア通貨危機以来

2020年03月29日(日)07時13分

北海ブレント油先物が1バレル=27ドル前後まで下落しているが、大半の石油生産国は現在、原油を20ドル未満で処分売りしているのが実情で、スポット価格は1990年代末のアジア通貨危機後以来の低水準に落ち込んでいる。写真は2019年11月、テキサス州で撮影(2020年 ロイター/Angus Mordant)

Julia Payne

[ロンドン 26日 ロイター] - 北海ブレント油先物が1バレル=27ドル前後まで下落しているが、大半の石油生産国は現在、原油を20ドル未満で処分売りしているのが実情で、スポット価格は1990年代末のアジア通貨危機後以来の低水準に落ち込んでいる。

石油価格は新型コロナウイルス感染拡大による需要の落ち込みと、サウジアラビアとロシアのシェア争いによる供給増加が相まって急落している。

一部の油種はブレント油より低い価格で売られるのが普通だが、現在の市場環境下でその差はさらに拡大。通常はブレント油より高いその他の油種も、現在はかつてないほどブレント油の価格を下回っている。

こうした値引きにより、多くの産油国で1バレル当たりの石油収入は、2020年予算に織り込まれた想定価格を大きく割り込んでおり、一部の国では国家財政がさらに圧迫されそうだ。

リフィニティブのデータやトレーダーによると、値引きその他のコストを勘案した場合、一部産油国の石油収入は1バレル=10ドル近くまで落ち込んでいる。ベネズエラのメレイ原油にいたっては、先週8ドルで売られた。

トレーダーによると、特に需要が減ったのはガソリンやジェット燃料などに適した軽質低硫黄原油で、そのためアゼルバイジャン、カザフスタン、ナイジェリアといった国々が厳しい状況に陥りそうだ。

ロイターの計算によると、ロシアは今週、指標となるウラル原油を1バレル=18ドルで、サウジは欧州向けのアラビアンライト原油を16ドルで販売した。

トレーダーによると、産油国が急いで原油を処分したがっているのは取引状況から明らかだ。

大手製油企業のあるトレーダーは「平常時には、買い値と売り値のスプレッドが0.1―0.2ドル前後の水準から交渉が始まり、数週間かけて取引が成立する。それが今は、バレル当たりのスプレッドが2ドル前後なのに、即決だ」と話した。

<さらに見通し悪化>

アナリストや主要なトレーダーは先週まで、世界の石油需要が向こう数カ月で日量1000万バレル、率にして10%減少すると予想していた。しかしその1週間後、大手商社ビトルは向こう数週間で20%落ち込むとの見通しを示した。

インドの製油企業は生産を減らし、欧州の製油工場は閉鎖を検討。中国の需要は回復しつつあるが、世界の燃料消費の5分の1を占める米国でロックダウン(都市封鎖)が実施される中、中国は唯一の希望の星でしかない。

軽質低硫黄原油は特に悲惨だ。軽油や燃料油、原油が何年間もタンクに貯蔵できるのに対し、ガソリンとジェット燃料は高品質の管理の問題や季節性、添加物などのため長期貯蔵ができない。欧州のトレーダーは「冬用ガソリンを夏用と一緒に貯蔵することはできない。今はちょうど切り替えの時期に当たる。6カ月以上ガソリンをタンクに入れておくのは無理だ」と話した。

今のところ重質油はましな状況だが、いずれは供給がだぶつくと予想されている。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ米大統領、クレジットカード金利に10%の上

ビジネス

関税返還となった場合でも米財務省には十分な資金=ベ

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米雇用統計予想下回る 円は

ワールド

米、ベネズエラと連携し石油タンカー拿捕=トランプ氏
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「不法移民からアメリカを守る」ICEが市民を射殺、証…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 8
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 9
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中