ニュース速報

ビジネス

米金融システムは安定、低金利や暗号資産にリスク=FRB報告

2019年11月16日(土)07時16分

11月15日、米FRBは報告書で金融システムは全体的に安定していると評価する一方、高水準の企業債務や世界的に長期化する低金利の影響、暗号資産(仮想通貨)などがリスクになる可能性を指摘した。写真は3月19日、ワシントンのFRB(2019年 ロイター/Leah Millis)

[ワシントン 15日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は15日公表した半期に一度の金融安定報告書で、金融システムは全体的に安定していると評価する一方、高水準の企業債務や世界的に長期化する低金利の影響などがリスクになる可能性を指摘した。中でも法定通貨に価値が裏付けされた暗号資産(仮想通貨)、ステーブルコイン(安定通貨)計画を巡るリスクを強調した。

金融安定を巡る全般的な状況は前回5月の報告からほとんど変わっておらず、「金融セクターの中核には耐性があるようだ」とした。その上で、商業用不動産など一部の資産価値は高いとしたものの、「リスク選好度」は「過去の基準」と整合的な水準にあると感じられるほか、家計債務は「収入と相対して控えめ」な水準にあると指摘。大手行のレバレッジは低水準にあるとしたほか、変動の大きい短期資金の利用に起因するリスクは金融機関にとって微小に過ぎないとの見解を示した。

一方、報告書は記録的な高水準にある企業債務に対する懸念を強調。一部FRB当局者は事業環境が悪化すれば問題化し、景気後退に陥った場合はこれが増幅されると懸念している。このほか、世界的な低金利により、銀行や保険会社、年金基金のリターンが徐々に失われ、次第により大きなリスクを取らざるを得なくなる可能性があるとした。

FRBのブレイナード理事は声明で「非常に低水準の信用スプレッドと、レバレッジドローンなどを通じて高水準に積み上がった非金融企業の債務という組み合わせは警戒の強化に値する。中期的には、長期化する低金利環境とそれに伴う利回り追求の動き、そして債務の拡大により、金融の脆弱性が高まる可能性がある」と指摘した。

FRBが今回の報告書で最も多くのページ数を割いたのは、フェイスブックが導入を計画している暗号資産「リブラ」などに代表されるステーブルコインを巡る懸念。

こうした通貨は取引の新たな手段になり得るとしながらも、広範な基盤を持つステーブルコインの構造が粗末だったり、規制が不十分だったりした場合、金融システムは「深刻な結果」に直面することになると警告。「ステーブルコイン決済ネットワークが世界的に急速に拡大する可能性は、金融安定、金融政策、資金洗浄・テロ支援対策、消費者と投資家の保護に対する重大な課題とリスクになる」とした。

*情報を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 8
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中