ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 保険的な利下げは検討

2019年10月31日(木)06時43分

カナダ銀行(中央銀行)は30日、政策金利を予想通り1.75%に据え置いた。ただカナダ経済に対する貿易摩擦の影響が強まっているとして、国内外の成長率見通しを引き下げた。オタワのカナダ中銀で2011年9月撮影(2019年 ロイター/CHRIS WATTIE)

[オタワ 30日 ロイター] - カナダ銀行(中央銀行)は30日、政策金利を予想通り1.75%に据え置いた。ただポロズ総裁は今回の会合で世界的な通商問題からカナダ経済を守るために「リスクに対する保険としての」利下げを検討したことを明らかにした。中銀はこのほか、カナダ経済に対する貿易摩擦の影響が強まっているとして国内外の成長率見通しを引き下げた。

ポロズ総裁は記者会見で、「カナダ経済に対する下方リスクを踏まえ、保険としての一段と緩和的な金融政策が現時点で正当化されるか検討した」と表明。ただ現時点ではそうした必要はないと結論付けられたと述べた。

総裁はこうした保険的な利下げは9月の会合では検討されなかったとも表明。ただ、海外に起因するリスク増大に対する認識は示した。

世界的に緩和傾向にある中、カナダ中銀は2018年10月以降、政策金利を据え置いている。中銀は現在の緩和水準は引き続き適切とし、今後の政策変更に関する言及は控えた。

また通商面での緊張が設備投資やコモディティー価格の重しになっているとし、「貿易摩擦や不確実性が続く中、カナダ経済の回復力がますます試されていることに留意している」と指摘。19年のカナダ成長率見通しを1.3%から1.5%に引き上げる一方、20年と21年の見通しをそれぞれ1.9%から1.7%、2.0%から1.8%に引き下げた。

さらに外需低迷や通商面での不確実性、産油が盛んなアルバータ州での財政支出の減少などを指摘。一方で雇用は引き続き堅調さを示し、賃金は改善しているとした。

BMOのチーフ・エコノミスト、ダグ・ポーター氏は、中銀のトーンは市場予想よりも「ややハト派的」だったと指摘。「中銀は金利変更の準備を全くしていないだろうが、世界の貿易見通しについて強く懸念していることはかなり明白」とし、「今後数カ月で事態が悪化した場合には行動する準備があるという数多くのヒントがあった」と述べた。

中銀は19年の世界成長率見通しを3.0%から金融危機後で最も低い2.9%に引き下げたほか、20年の見通しも3.2%から3.1%に引き下げた。貿易摩擦が世界経済を弱めるとした。

また金融政策を検討する上で「製造業や投資におよんでいる世界景気減速の広がりを監視する」とし、消費支出や住宅市場、財政政策の動向も注視していくとした。

中銀の決定を受けカナダドルは対米ドルで2週間ぶりの低水準近辺に下落。TD証券のカナダ担当首席ストラテジスト、アンドリュー・ケルビン氏は、カナダ中銀は「ハト派的だった」とし、「市場はこれに反応している」と述べた。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州委、軍事輸送の新システム提案へ 国境越えた機動

ワールド

独中副首相が会談、通商関係強化で一致 貿易摩擦解消

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中