ニュース速報

ビジネス

アングル:米株の波乱「まだ終わらない」、古参投資家が警戒

2018年02月18日(日)09時35分

 2月15日、米国株下落とボラティリティ増大の予想が当たった古参の投資家たちは、手放しで喜んでいてもおかしくない。ところが実際には、幾分落ち着きを取り戻した今の市場の先にまだ控えるリスクに、油断なく目を向けている。NY証券取引所で8日撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

[ニューヨーク 15日 ロイター] - 米国株下落とボラティリティ増大の予想が当たった古参の投資家たちは、手放しで喜んでいてもおかしくない。ところが実際には、幾分落ち着きを取り戻した今の市場の先にまだ控えるリスクに、油断なく目を向けている。

先週の急激な値動きで、米国株は最高値から10%余り下がって調整局面入りが確定した。きっかけは米国債利回りの高騰とインフレ懸念だったが、株価収益率(PER)が18.9倍に達するほどバリュエーションが高まっていたことも背景だ。またボラティリティの低水準長期化に賭ける取引の巻き戻しが、下げ圧力を助長した。

株安自体を視野に入れていたストラテジストや投資家は増えていたが、株価はいったん値下がりした後に再び上昇するというシナリオが、彼らの間では中心的な意見だった。

本当のところ現在はどういう事態なのかが大きな問題といえる。

「あなた方は今が底値だと心底から思いますか」と先週、株価下げ止まりに疑問を呈したのは著名投資家ジェフリー・ガンドラック氏だ。1年余り前から市場があまりにも落ち着き過ぎだと警鐘を鳴らしてきた同氏は、特に投資家の不安心理の目安とされるボラティリティ・インデックス(VIX)が「常軌を逸した低さ」にある状況が要注意だと訴えていた。

今回の株安では確かに、ボラティリティのショートを構築する人気の上場投資信託(ETF)のいくつかが打撃を受け、さらなる売り圧力をもたらした。

ルーミス・セイレス副会長で「ウォール街のウォーレン・バフェット」の異名を持つダン・ファス氏は何年も前から、米国債は悪循環的な売りに脆弱で、利回りが跳ね上がる恐れがあると警告してきた。昨年11月にはロイターに「私は『世界の終りを告げる人』になろうとしているわけではないが、1つの可能性として存在する」と米国債投資が持つ危険性を語った。

そのファス氏は今週の電話インタビューで、ルーミスのポートフォリオに現金と現金相当資産を極端な高水準まで積み上げ、先週その一部を投資に振り向けたと打ち明けた。

長年空売りを手掛けてきたビル・フレッケンスタイン氏は「先週の値動きは、強気市場の終わりが迫っている兆しが出始めたことを意味する」と指摘。市場には、さしたる確信もないまま「パーティーに加わろう」と、インデックス・ファンドやETFなどの購入を通じて流れ込んだ大量の足の速いお金(ホットマネー)が存在し、先週は恐らくは年内により大きな事件が起きる単なる予兆にすぎないとの見方を示した。

フレッケンスタイン氏は2009年にショートファンドを閉じたものの、近く再立ち上げを考えているという。

古くからウォール街のストラテジストとして活躍しているプライベート・ウェルス・ソリューションズのバイロン・ウィーン副会長は、今年のS&P総合500種が10%の調整に見舞われると予想していた。

ウィーン氏は「まだ終わったとは思わない」と断言。S&P総合500種は年末には3000超で取引を終えるだろうが、これからも曲折があるとみており、足元の調整で楽観ムードが十分払しょくされたわけではないため、10%を超える一段の値下がり余地があると予想した。

(Jennifer Ablan、Megan Davies記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-インド当局、インディゴ航空に規制措置発動を警

ビジネス

訂正GDP2次速報、7─9月は年率-2.3%に下方

ワールド

米は依然最大の同盟国、EU外相が強調 トランプ政権

ビジネス

インド成長率、今年度は7%以上に 基礎的要因強く=
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中