ニュース速報

ビジネス

アングル:日銀の出口早期化に潜む新興国からの資金逆流リスク

2018年01月14日(日)10時41分

 1月11日、今週は日銀が長期国債買い入れを減額したことをきっかけに、大規模緩和の出口が予想より早まるのではないかとの懸念が浮上し、世界の金融市場に動揺が広がった。写真は日銀本店。2017年9月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[ロンドン 11日 ロイター] - 今週は日銀が長期国債買い入れを減額したことをきっかけに、大規模緩和の出口が予想より早まるのではないかとの懸念が浮上し、世界の金融市場に動揺が広がった。特に新興国は、円高によって日本の投資資金が引き揚げかねないとみられ、通貨が軒並み値下がりした。

その後市場は落ち着きを取り戻したものの、日銀が既に日本国債の半分を購入してしまっている点を踏まえると、本格的な買い入れ縮小の時期は近づいているのかもしれない。もしそれが実現すれば、円が高騰して日本勢の資金還流が進む恐れがある。

それが新興国にどの程度影響するのか予想は難しいが、今週の値動きは何らかの手掛かりになるだろう。

新興国通貨の対ドル下落率は0.3─0.8%を記録。対円ではトルコリラがおよそ3%下がりし、ブラジルレアルとメキシコペソ、南アフリカランドの下落率は1.5─2・5%だった。

UBSのストラテジスト、マニク・ナライン氏は「市場は日銀の動きを金融緩和がピークに達しつつあることの表れと解釈し、新興国通貨のクロス円相場が反応した。われわれの分析からは、新興国株市場においてまだ米国の投資家の存在がずっと大きいが、日本勢の保有は増えていることが分かる」と述べた。

日本の個人投資家の新興国投資はつとに知られている。だがそれだけでなく、2010年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が新興国市場への資金配分を増やすと表明して以来、機関投資家の関心もゆっくりだが高まってきた。

国際金融協会(IIF)のデータでは、2013年以降の日本から新興国への資金流入額は約660億ドルで、投資先は債券と株式がほぼ半々だ。このうち100億ドル程度が昨年1─10月に流れ込んだ。昨年の新興国に流入した資金の総額は2350億ドル。

日興アセットマネジメントのポートフォリオマネジャー、ラファエル・マレシャル氏は、同社に入った2年前から日本の資金運用担当者の新興国債券に対する投資意欲が上向いたと指摘し、その一因として新興国債が最近堅調に推移していることを挙げた。

昨年の新興国債のドル建てリターンは14%。ただ円がドルに対して3.5%上昇した影響で円建てリターンは目減りしている。

マレシャル氏によると、円が下落する公算は乏しい一方で、日本の金融政策は今後引き締め方向になりそうだ。それでも新興国債のリターンは7─10%と期待されるので、2─3%の円高程度では日本の投資家の買い意欲に水は差されないだろうという。

2014年に落ち込んだ日本の個人投資家による新興国資産買いは、その後増大している。

ブラウン・ブラザース・ハリマンの推計に基づくと、日本の個人投資家向けに昨年1─3月に販売された新興国通貨建ての「売り出し債」は39億ドルに達した。最も人気があったのはトルコリラ建て債で販売割合は全体の28%。次いでインドルピー建て、ブラジルレアル建て、メキシコペソ建て、ロシアルーブル建てが売られた。

今後新興国通貨のクロス円取引に悪影響を及ぼす可能性がある要素の1つは、貿易問題だ。今週は中国政府が米国による保護貿易に対する報復措置として米国債購入の縮小や停止を検討中だと一部で報道され、円が急伸する場面があった。

ミレニアム・グローバル・インベストメントのグローバル経済戦略責任者クレア・ディソー氏は「米国の保護主義が再び強まるリスクは新興国全体、特にアジアにとってマイナスだ。メキシコは既に北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉からリスクにさらされている」と述べた。

(Sujata Rao記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

キューバの燃料事情は「危機的」とロシア、米の締め付

ビジネス

ユーロ圏投資家心理、2月は予想上回る改善 25年7

ワールド

高市首相、食料品の消費税2年間ゼロ「できるだけ早く

ワールド

英元王子アンドルー氏、エプスタイン被告と公的文書共
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 8
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中