ニュース速報

「中国もバイデン親子の調査を」、トランプ氏また外国関与促す

2019年10月04日(金)11時42分

[ワシントン 3日 ロイター] - トランプ米大統領は3日、中国に対し、来年の米大統領選で対抗馬になると目される野党民主党のジョー・バイデン前副大統領と息子を調査するよう呼び掛けた。ウクライナ政府への同様の要請を巡り、自身の弾劾調査が進められる中、公の場で外国政府の米大統領選への関与を促した格好だ。

トランプ大統領は記者団に対し、ウクライナはバイデン氏親子の調査に着手すべきとした上で、「中国もバイデン氏親子に対する調査を始めるべきだ。中国で起きたことはウクライナで起きたことと同様悪質だ」と述べたが、詳細には踏み込まなかった。

中国の習近平国家主席に調査するよう依頼したかとの質問に対しては「まだ依頼していないが、検討を始めることは可能だ」と応じた。

在米中国大使館は現時点で取材に応じていない。

トランプ大統領が再選を視野に権限を乱用し、ウクライナに圧力を掛けたとの疑惑から、米議会ではトランプ大統領弾劾に向けた正式調査が進められている。ホワイトハウスが公表した電話記録や内部告発書からは、トランプ大統領が7月に行ったウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談でバイデン氏親子の調査を依頼したことが明らかになっている。

バイデン氏の息子ハンター・バイデン氏は、ウクライナの民間ガス会社の取締役を務めたほか、中国でプライベートエクイティ(PE)ファンドを立ち上げた経歴を持つ。

ペンス副大統領は、バイデン氏親子の調査に支持を表明。バイデン氏がオバマ前政権でウクライナ政策を主導していた際、息子のハンター氏にはウクライナのガス会社取締役として月5万ドルが支払われていたと指摘し、「調査に値する。他の国も調査に乗り出すべきだろう」と述べた。

関係筋2人よると、政府高官らはトランプ大統領が中国について言及することは認識していなかったものの、トランプ氏が過去にも言及していたことから、特に大きな驚きではなかったという。

トランプ大統領の発言を受け、バイデン陣営は声明を発表。トランプ大統領が「すでに覆されている陰謀説に執拗に固執している」と批判。「トランプ政権は急速に沈下し、トランプ大統領は全国テレビの視聴者を前に崩壊する」とした。

トランプ大統領はその後、民主党が来年の大統領選で勝利できないと見込み、大統領弾劾に向けた調査を開始したと批判。「民主党は勝利できないことを分かっており、くだらない弾劾に向けて動いている」と述べた。

ロイター/イプソスの調査によると、トランプ大統領の支持率は現時点でバイデン氏を含む民主党の有力候補者を若干下回っている。

米下院情別委員会のアダム・シフ委員長は、トランプ大統領が中国にバイデン氏の調査を呼び掛けたことについて、「米国の大統領が政敵を調査し選挙を有利に運ぶために外国政府の関与を促すことは大統領就任の宣誓に対する根本的違反だ。米国の国家安全保障を危険にさらしている」と批判した。

共和・民主双方の政権下で大使を務めたニコラス・バーンズ氏はMSNBCに対しトランプ大統領の発言は過ちと指摘。「大統領にとって政治的な過ちと言えるが、それ以上に法的そして道徳的に過ちだ。弾劾に向けた下院の調査で焦点とされるべきだ」と述べた。

<弾劾調査>

共和党のマッカーシー下院院内総務は3日、民主党のペロシ下院議長に書簡を送り、「慣例となっているルールや手続きが整う」まで弾劾調査を中断するよう要請した。

下院本会議で弾劾調査の承認に向けた採決を行う計画があるのかや、大統領の弁護士がすべての公聴会や宣誓証言に出席することを認めるかどうかをペロシ氏に問い、これらの実施を拒否すれば、これまでの弾劾手続きに反すると指摘した。

関係筋によると、ホワイトハウスは4日にもペロシ氏に書簡を送り、下院本会議での採決を通じて弾劾調査が正式に承認されるまで、トランプ氏と政権当局者は議員らの要求を無視できると主張する計画という。

先週辞任したウクライナ特使のカート・ボルカー氏は3日、トランプ大統領弾劾調査の一環として、下院で宣誓証言を行った。

内部告発によると、ボルカー氏は対ウクライナ圧力を巡り、トランプ氏の顧問弁護士であるジュリアーニ元ニューヨーク市長がもたらした「ダメージの食い止め」に関与したとされている。

ジュリアーニ氏は3日、ロイターに対し、ボルカー氏が自身の行動について懸念を表明したことはないと語った。

※内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中