ニュース速報

焦点:コンゴ政権交代でも晴れない「コバルト業界の霧」

2019年01月19日(土)13時12分

Joe Bavier

[ヨハネスブルク 14日 ロイター] - 電気自動車(EV)に使われるコバルトの主要産出国コンゴ民主共和国(旧ザイール)の選挙管理委員会は10日、昨年12月の大統領選で野党・民主社会進歩同盟(UDPS)のチセケディ党首が勝利したと発表。カビラ大統領の後継者、ラマザニ前副首相兼内務・治安相を破ったことで、約20年にわたる汚職にまみれたカビラ政権が幕を閉じることになった。

しかしチセケディ氏は鉱業界では無名の人物である上に、秘密裏にカビラ氏と手を組んで不正に勝利を手に入れたとの憶測も流れ、コバルト業界を覆う霧は晴れない。

資源採掘企業の命運は、新政権の動向に大きく左右されるだろう。マッキンゼーは昨年、コバルトの需要が2025年までに60%増えるとの予想を示すとともに、コンゴ政府の政策の先行き不透明さをコバルトにとっての最大の供給リスクに挙げた。

採掘企業の関係者は「鉱業セクターについては、カビラ政権時代よりも状況が厳しくなるだろう。ある程度は良くなるかもしれないが、期待していない」と話した。

選管の発表にチセケディ陣営は沸いた。しかしすぐに選挙結果に疑いが浮上した上、カビラ氏が広い人脈を駆使して経済への影響力を維持する可能性も残る。

ニューヨーク大学コンゴ研究グループのディレクター、ジェーソン・スターンズ氏は「極めて不安定な状況になるだろう。賢明な投資家なら今後半年間は様子見をみるべきだ」と述べた。

チセケディ氏は投資家の判断材料となる政界での実績が乏しい。

ある業界筋によると、チセケディ氏の勝利を見込んでいた企業はほとんどなく、別の野党候補で有力な鉱業州の前州知事に近いファユル氏に関心が集まっていた。鉱業関連企業の間では、こうした戦略を取ったためにチセケディ氏との関係が悪化するのではないかとの危惧が広がっているという。

チセケディ氏が率いるUDPSは以前から鉱業分野で国が重要な役割を担うべきだとの立場を取り、州政府資産の民営化に反対してきた。しかしチセケディ氏は今回の大統領選では、昨年導入された鉱業規約の見直しを示唆し、業界寄りの姿勢をみせた。規約は幅広い税率を引き上げるもので、業界と政府の関係は最悪になっていた。

ただ天然資源管理の改善を訴えているリソース・マターズのディレクター、エリザベス・シーセンス氏は「大企業への課税強化は非常に支持が多く、撤回は容易ではない」と述べ、チセケディ政権が誕生しても見直しの見込みは乏しいとみている。

ファユル氏陣営は、チセケディ氏がカビラ氏と裏取引を行い、権力の一部を譲り渡す見返りに大統領選での勝利を手に入れたと主張し、憲法裁判所に異議を申し立てた。

チセケディ氏とカビラ氏の陣営はこうした訴えを否定している。

ロイターが取材した鉱業関連企業の幹部5人は全員が、カビラ氏が指名した憲法裁判所がチセケディ氏の勝利を有効と判断するという前提に立った経営には切り替えていないと述べるとともに、カビラ氏は鉱業セクターでの影響力保持に躍起になるとの見通しを示した。

企業は省庁のポストを巡る両者の縄張り争いに巻き込まれ、だれが本当に権力を握っているのか分からなくなる恐れがある。

ニューヨーク大学のスターンズ氏は「契約を受注したり、採掘許可を得る際に働き掛けを行うべき人物というのが常に存在する。トップはカビラ氏に近い人物だ。これからはこうした状況が流動化し、それが数カ月続くだろう」と述べた。

(Joe Bavier記者)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

MAGAZINE

特集:ニュースを読み解く 哲学超入門

2019-5・28号(5/21発売)

トランプ現象、移民、監視社会、SNS...... AIも解答不能な難問にあの思想家ならこう答える

人気ランキング

  • 1

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はいま......

  • 2

    アメリカがイランを攻撃できない理由──「イラク侵攻」以上の危険性とは

  • 3

    元TBSアナ久保田智子:不良だった私が東大に入るまで

  • 4

    【特別寄稿】TBSアナ久保田智子「私の広島、私達のヒ…

  • 5

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 6

    学力格差より深刻な、低所得層の子どもの「自尊心格…

  • 7

    「イランは終わりだ!」バグダッドの米大使館付近へ…

  • 8

    文在寅、リベラルなのに「記者たたき」に冷淡な大統領

  • 9

    あの男が狙う「イラン戦争」──イラク戦争の黒幕ボル…

  • 10

    徴用工問題で日韓が近づく危険な限界点

  • 1

    徴用工問題で日韓が近づく危険な限界点

  • 2

    29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の容疑者が再犯 少年法見直しの議論は海外にも 

  • 3

    10%の食塩水1kg作るのに必要な塩と水は? 大学生が「%」を分からない絶望的な日本

  • 4

    「人肉は食べ飽きた」と自首した男と、とんでもない…

  • 5

    トランプの言うことは正しい

  • 6

    アメリカがイランを攻撃できない理由──「イラク侵攻…

  • 7

    「古代マヤの宇宙飛行士」説、アメリカで再浮上?

  • 8

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はい…

  • 9

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 10

    強気の米中、双方に死角あり「アメリカはまずい手を…

  • 1

    徴用工問題で日韓が近づく危険な限界点

  • 2

    「英王室はそれでも黒人プリンセスを認めない」

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    59歳の人気ランジェリーモデルは5年前まで普通のお母…

  • 5

    29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の…

  • 6

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 7

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 8

    おどろおどろしい溶岩の世界!?木星の北極の正体が…

  • 9

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はい…

  • 10

    エイリアンはもう地球に来ているかもしれない──NASA…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
広告営業部員ほか求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!