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焦点:コンゴ政権交代でも晴れない「コバルト業界の霧」
Joe Bavier
[ヨハネスブルク 14日 ロイター] - 電気自動車(EV)に使われるコバルトの主要産出国コンゴ民主共和国(旧ザイール)の選挙管理委員会は10日、昨年12月の大統領選で野党・民主社会進歩同盟(UDPS)のチセケディ党首が勝利したと発表。カビラ大統領の後継者、ラマザニ前副首相兼内務・治安相を破ったことで、約20年にわたる汚職にまみれたカビラ政権が幕を閉じることになった。
しかしチセケディ氏は鉱業界では無名の人物である上に、秘密裏にカビラ氏と手を組んで不正に勝利を手に入れたとの憶測も流れ、コバルト業界を覆う霧は晴れない。
資源採掘企業の命運は、新政権の動向に大きく左右されるだろう。マッキンゼーは昨年、コバルトの需要が2025年までに60%増えるとの予想を示すとともに、コンゴ政府の政策の先行き不透明さをコバルトにとっての最大の供給リスクに挙げた。
採掘企業の関係者は「鉱業セクターについては、カビラ政権時代よりも状況が厳しくなるだろう。ある程度は良くなるかもしれないが、期待していない」と話した。
選管の発表にチセケディ陣営は沸いた。しかしすぐに選挙結果に疑いが浮上した上、カビラ氏が広い人脈を駆使して経済への影響力を維持する可能性も残る。
ニューヨーク大学コンゴ研究グループのディレクター、ジェーソン・スターンズ氏は「極めて不安定な状況になるだろう。賢明な投資家なら今後半年間は様子見をみるべきだ」と述べた。
チセケディ氏は投資家の判断材料となる政界での実績が乏しい。
ある業界筋によると、チセケディ氏の勝利を見込んでいた企業はほとんどなく、別の野党候補で有力な鉱業州の前州知事に近いファユル氏に関心が集まっていた。鉱業関連企業の間では、こうした戦略を取ったためにチセケディ氏との関係が悪化するのではないかとの危惧が広がっているという。
チセケディ氏が率いるUDPSは以前から鉱業分野で国が重要な役割を担うべきだとの立場を取り、州政府資産の民営化に反対してきた。しかしチセケディ氏は今回の大統領選では、昨年導入された鉱業規約の見直しを示唆し、業界寄りの姿勢をみせた。規約は幅広い税率を引き上げるもので、業界と政府の関係は最悪になっていた。
ただ天然資源管理の改善を訴えているリソース・マターズのディレクター、エリザベス・シーセンス氏は「大企業への課税強化は非常に支持が多く、撤回は容易ではない」と述べ、チセケディ政権が誕生しても見直しの見込みは乏しいとみている。
ファユル氏陣営は、チセケディ氏がカビラ氏と裏取引を行い、権力の一部を譲り渡す見返りに大統領選での勝利を手に入れたと主張し、憲法裁判所に異議を申し立てた。
チセケディ氏とカビラ氏の陣営はこうした訴えを否定している。
ロイターが取材した鉱業関連企業の幹部5人は全員が、カビラ氏が指名した憲法裁判所がチセケディ氏の勝利を有効と判断するという前提に立った経営には切り替えていないと述べるとともに、カビラ氏は鉱業セクターでの影響力保持に躍起になるとの見通しを示した。
企業は省庁のポストを巡る両者の縄張り争いに巻き込まれ、だれが本当に権力を握っているのか分からなくなる恐れがある。
ニューヨーク大学のスターンズ氏は「契約を受注したり、採掘許可を得る際に働き掛けを行うべき人物というのが常に存在する。トップはカビラ氏に近い人物だ。これからはこうした状況が流動化し、それが数カ月続くだろう」と述べた。
(Joe Bavier記者)