コラム

大統領の「自爆」クーデターと、韓国で続いていた「軍人政治」

2024年12月26日(木)11時26分

人気ドラマ『愛の不時着』を槍玉に挙げる心理

その点、アメリカの軍人たちはこれまで250年近く、組織より憲法に忠誠を誓い、文民主導の「法の支配」への服従を徹底して貫いてきた。しかし、韓国の軍と政党にそのような姿勢は見られない。

韓国では、軍出身者が治安関連の要職に就くケースが多い。そうした高官たちは軍との結び付きが強く、民政が軍政的な性格を帯び、危機の際に反射的に軍を動かそうとする試みに歯止めがかかりにくい。


もう1つの危険な要素は、韓国の軍が保守政党と強力な一体感を抱く一方、進歩派政党と対立関係にあることだ。現在、保守政党の「国民の力」は、進歩派の「共に民主党」を親北朝鮮派と批判している。

主要政党が自分たちを「愛国者」と位置付け、対立政党を「裏切者」と批判するとき、民主政治の基盤は常に揺らぐ。韓国ではそのような政治文化の下、保守派が人気ドラマ『愛の不時着』を「北朝鮮を美化して国家安全保障法に違反している」とやり玉に挙げたこともあった。

尹のクーデター未遂の背景には、大統領の汚職疑惑と逮捕への不安があった。韓国の歴代大統領はしばしば、自身の生き残りと国家の防衛を同一視してきた。今回の騒動では、国会が戒厳令の解除を求める決議を可決したにもかかわらず、高い地位に就いている職業軍人たちは、尹が戒厳令解除の方針を示すまで国会の要求に従うことを拒み続けた。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国新築住宅価格、10月は-0.5% 1年ぶり大幅

ワールド

アマゾンとマイクロソフト、エヌビディアの対中輸出制

ワールド

米、台湾への戦闘機部品売却計画を承認 3.3億ドル

ワールド

ファイザー、肥満症薬開発メッツェラの買収を完了
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story