<中世になって醸造に樽を使ったことが、泡の重要性を高める大きな転機に。グラスを傾けずに直立させたまま注ぐ理由について>

最高のビールを味わうために、必要なものは何だろう?

グラスをキンキンに冷やす人もいれば、ライムを一切れ添える人もいる。しかし泡の重要性については、あまり知られていない。どのくらいの量の泡が適切か? それはどうすればできるのか?

泡の量が多すぎると、鼻の下に白い「ひげ」ができてしまう。でも少なすぎると、おなかが早く膨れてしまう。

泡の正体は炭酸ガス。もし泡がなかったら、炭酸ガスはビールに溶け込んだまま胃に入る。そこへ何かを食べたりすると、胃の中でビールと混ざり炭酸ガスが放出され膨脹してしまう。

泡を作らないようにグラスを傾けて注ぐのは、初心者が陥りがちな過ちだ。

この問題を解決しようと、日本のデザインオフィス「nendo」が先頃、プルタブが2つ付いたビール缶を発表。

1つ目のプルタブを引いて飲み口を少し開ければ、きれいな泡が注がれる。その後、2つ目のプルタブで飲み口を全開にしてビールを流し込むと、液体と泡の比率が程よい一杯ができる。

これはおいしいビールを飲むために考え出された技術の最新例。そもそもビールが作られるようになって以降、人類は最高の一杯を飲むために絶え間ない努力を続けてきた。

ビールが初めて作られたのは約1万3000年前、現在のイスラエルのハイファ付近だとみられている。この辺りにいた最初のビール生産者と消費者は、東地中海の狩猟採集民族であるナトゥーフ人だ。

彼らが飲んでいたビールはろ過されておらず、見た目は薄い粥(かゆ)のようだった。このため、紀元前5~4世紀のイランやイラクでは、先端にフィルターを付けて固形物が入ってこないようにした「ビールストロー」が発明された。

グラスは立てたままで

人類ビール醸造史の次の大きなステップは、密閉度が高い容器である樽の使用だ。中世になり、木を使った樽やおけが普及。これによって容器の中で酵母菌を発酵させて炭酸ガスを作れるようになり、以前の粥のようなビールから脱することができた。

このときビールを一定の圧力下で保管・販売することが、初めて可能になった。見た目や味は根本から変わり、注ぎ立てのものは発泡性と泡立ちを備えた。こうして泡は、ビールの新鮮さを示す重要な要素になった。

かつてビールの泡は「襟」と呼ばれていた。この言葉を初めて使ったのは、ジョン・スタインベックの1945年の小説『キャナリー・ロウ〈缶詰横町〉』だが、なぜこの呼び名になったかは分からない。

実際、人々が泡の呼び方に頓着しないのは、正しいビールの注ぎ方に頓着しなかったことと関係がありそうだ。

昔から、ビールは泡をたくさん立てて注がれていたから、「泡切り」の道具が必要だった。泡を多くしたければ、グラスを傾けず直立させたまま注げばいい。こうすると炭酸ガスが解き放たれ、よりおいしい味わいがグラスの上のほうに運ばれる。

ところが最近は、グラスを傾けてビールを注ぐ人が多いようだ。これでは最低限の泡しかできず、クリーミーで香ばしい一杯を味わえない。

今度ビールを注文するときは、店員にグラスを立てたまま注ぐように頼もう。最高の一杯には泡が欠かせない。

The Conversation

Anistatia Renard Miller, PhD in History, University of Bristol

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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