David Lawder

[ワシントン 1日 ロイター] - 米中間選挙で野党民主党が議会の主導権を握った場合、トランプ大統領の通商政策には新たな摩擦の種が生まれるだろう。来年に入ってそうした政策を検証する公聴会や調査が相次いで実施され、世論に訴えるための関税撤廃法案の採決が相次ぐとみられるからだ。

しかし通商問題の専門家や議会関係者に話を聞くと、トランプ氏がさらなる関税措置を推し進めようとする姿勢が揺らぐことはない。トランプ政権は、議会の承認を必要としない大統領権限の活用を一層強化する方針を進めており、通商政策もその対象に含まれている。

民主党は、トランプ政権が導入した多くの関税や、その法的根拠となっている古い法律を無効化する法案の成立を目指しているが、議席を伸ばしたとしても大統領拒否権という現実的な壁に突き当たることになる。

民主党が議会の支配権を奪還するには、下院と上院の双方で4議席の純増が必要。現在下院は共和党が218対214、上院は53対47でそれぞれ多数派を占めている。世論調査では民主党が下院を奪還する可能性が高いとみられているものの、上院は依然として接戦で、民主党単独で大統領拒否権を覆せるほどの議席を獲得する見通しは立っていない。

それでも上院財政委員会の民主党トップ、ロン・ワイデン議員は「最も優先される課題の1つは、カナダ製品への関税撤廃だろう。これらの関税は価格上昇を招き、国境の両側の地域社会に悪影響を与えている」と述べた。

民主党が上下院のいずれかで多数派を獲得すれば、これまで棚上げされてきた通商関連法案の採決を実施する可能性がある。その1つが上院民主党トップ、シューマー院内総務が提出した「トランプ関税税撤廃法案」だ。この法案の目的は、カナダ製品への懲罰的関税の根拠となっている1930年関税法第338条や、トランプ政権が一時的に導入した世界一律10%関税の根拠法である1974年通商法第122条の廃止にある。またワイデン氏を含む28人の共同提案者が名を連ねる同法案には、これらの古い通商法に基づいて徴収された関税を全額返還する内容も盛り込まれている。

ただワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の非常勤アドバイザー、ウィリアム・ラインシュ氏は「民主党はいろいろなことを試みるだろうが、どのシナリオでも両党とも拒否権を覆せるほどの議席を持たないため、最終的に成立する法案はほとんどないだろう」と指摘した。

<公聴会が活発化>

とはいえ、民主党が通商関連委員会の主導権を握れば、トランプ政権の通商政策を監視し追及する公聴会や調査を継続的に実施するための大きな足掛かりを得ることになる、というのがラインシュ氏ら専門家の見方だ。

主な調査対象は、特定企業に恩恵を与える関税免除の不透明な決定プロセス、関税が中小企業に与える影響、そして日本や韓国などとの通商合意に伴って約束された数千億ドル規模の投資資金がどのように配分されているかといった点になる。

こうした強硬な監視姿勢は、過去2年間にわたってトランプ関税に対して基本的に静観を続けてきた共和党優勢の議会が様変わりすることを意味する。米通商代表部(USTR)の元法律顧問で、上院財政委員会民主党スタッフとしても通商問題を担当したグレタ・パイス氏は、民主党による象徴的な関税撤廃法案の採決と相まって、こうした監視活動が通商政策論争の流れを変え始め、2028年の選挙に影響を及ぼすとの見方を示した。

同氏は「すぐに通商権限改革法案を成立させるだけの票数を確保できなくても、その取り組みは将来の大統領選挙に向けた政策提案の土台になる。これは民主党だけでなく議会全体が、今後2-4年の間にどのような通商立法や制度改革を進めるべきかを考える出発点になる」と強調した。

<トランプ氏は関税路線堅持>

もっとも議会からの圧力が強まったとしても、トランプ氏が残る任期中にさらなる関税措置を追求する姿勢を変える公算は乏しい。政権は16の主要貿易相手国・地域の産業の過剰生産能力について調査を実施する予定で、その結果によっては新たな関税措置が打ち出される可能性がある。

ホワイトハウスのミドルトン報道官は、過去の貿易協定によって米国の労働者、農家、企業が不利益を被らないよう、トランプ氏は関税を軸とする通商政策を引き続き推進すると説明した。「大統領は通商交渉でも経済政策でも『アメリカ・ファースト』の姿勢を決して曲げない。減税や規制緩和を含む経済政策によって、既に約20件の公正な貿易協定と数兆ドル規模の製造業投資を実現しており、今後も米国民にさらなる進歩、雇用、機会をもたらすだろう」と表明した。

ワシントン大学(ミズーリ州セントルイス)の非常勤教授で国際仲裁法の専門家ミロシュ・イフコビッチ氏は、各国の交渉相手もトランプ氏が関税維持に強い意志を持っていることを理解しており、議会がそれを覆せないことも認識していると説明した。

イフコビッチ氏によると、インド、ベトナム、カナダなど、米国との通商交渉で様子見姿勢を取っている国々にとって、中間選挙の結果を待つ戦略は決して得策ではない。「中間選挙によって米国政府やトランプ氏の外交・通商政策が大きく変わると考えている国々は誤っている。交渉を先送りしている国々は、むしろ自らの交渉機会を損ねている」という。

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