Rae Wee

[2日 ロイター] - 大規模なハッキング被害を被った暗号資産(仮想通貨)交換業者大手バイナンスの共同最高経営責任者(CEO)、イー・ヘー氏は2日、システムや投資家の安全確保が最優先課題だと述べた。トレーダーの反応は今のところ比較的冷静だが、セキュリティー上のリスクが強く意識される中、大口投資家は暗号資産に慎重な姿勢を強める可能性が高い。専門家からは、暗号資産の将来にとって安全性が鍵との声が聞かれる。

バイナンスは、ハッキングで盗まれた63億ドル相当の資産の95%を補塡し、1日に出金を一部再開した。再開後の9時間半で差し引き36億4000万ドルが引き出された。同社はXで「出金額は当初急増した後、減少して落ち着きつつある」とし、1日には約46億ドルの流出に対して10億ドルの入金があったと明らかにした。

イー・ヘー氏は2日、Xへの投稿で「現在の最優先事項は環境の安全を確保することだ。その後、利用者は資金を引き出せるようになり、バイナンスは業務を再開できる」と述べた。

ビットコインなどの暗号資産も落ち着きを取り戻し、市場全体で取引高が増加した。

トレーダーらはロイターに対し、口座を維持していると語った。

シンガポールを拠点とするブロックチェーン推進団体、アジアWeb3 AI協会のジェイ・コー副会長は「必ずしもバイナンスから全てを引き出すつもりはない。中央集権型取引所は流動性や取引、市場へのアクセスの面で引き続き重要な役割を果たしているからだ」と述べた。

バイナンスの利用者ライアン・タン氏は、急いで資金を引き出すつもりはないと話した。4年前に別の暗号資産交換業者FTXが経営破綻して以来、口座に置く資産を少なめにしてきたという。「FTXの破綻後、取引所に資産を置いたままにせず、全て自分のウォレットで保有することにした」と語った。

<機関投資家は二の足、安全性が課題>

ただ、史上最大の金融資産窃盗となる可能性がある今回の事件に、投資家はなお動揺している。アナリストは、機関投資家による暗号資産の購入にはしばらく歯止めがかかる可能性が高いと指摘する。

香港のデジタル資産金融サービス会社ハッシュキー・グループのシニアリサーチャー、ティム・スン氏は、広範なパニックや大規模な集中出金はまだ起きていないとしながらも、「今回の事件が市場の信頼に与えた打撃は、盗まれた資産をはるかに上回る可能性が高い。むしろ、セキュリティーへの懸念が、マーケットメーカーや機関投資家、さまざまな投資家の資産配分の水準に影響を及ぼすだろう」と指摘した。

米ブロックチェーン分析会社TRMラボのグローバル政策責任者、アリ・レッドボード氏によると、一部の大口投資家が好んで使うビットコイン現物上場投資信託(ETF)からは10月30日に6億4300万ドルが流出した。日次の流出額としては10月で最大。また、13億ドルを超えるレバレッジポジションが清算された。

レッドボード氏は「これらの数字は、投資家がリスクを減らしていることを示している」と指摘し、「取引所へのハッキングは、ネット経由で瞬時に実行される銀行強盗のようなものだ。他人の資金を預かる立場の人にとっては、リスクが読みにくく不安定になる 」と語った。

盗まれた資金の約半分はステーブルコインで、サークルなどの発行会社が凍結した。サークルは2日、11億ドルを超えるUSDCを凍結したと明らかにした。

暗号資産回収会社アイサンクチュアリの創業者のジョナサン・ベントンCEOは、盗まれた資金を追跡する技術はあるとしたが、資産が消える前に、その情報を迅速かつ連携の取れた行動につなげることが課題だと述べた。

英国家犯罪対策庁(NCA)の国際汚職対策部門の元責任者でもあるベントン氏は「暗号資産の将来を決めるのは、市場に流入する資金の多さではなく、流入した資金がどれだけ安全かだ」と語った。

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