John Davison
[ロンドン 15日 ロイター] - イエメンの親イラン武装組織フーシ派はこの1週間で、サウジアラビアのリヤド国際空港や世界最大の石油会社サウジアラムコの本社を空から攻撃した。隣国の敵対勢力による脅威に対するサウジアラビアの脆弱性が浮き彫りになった。
外国からの資金を呼び込み、石油依存からの脱却を目指すサウジにとって、一連の攻撃は「安全な国際投資拠点」という幻想を打ち砕くものとなっている。
兵器や中東情勢の専門家は、湾岸地域における米国の主要同盟国にとって悪夢のようなこの状況が現実となった背景には、複数の要因があると指摘する。イランがフーシ派による先進兵器の製造・運用面でほぼ自給自足状態を実現するのを年単位で支援してきたことや、米国とイランの戦争によって迎撃ミサイルの備蓄が減少したことなどだ。
<イランの支援で自立化>
イランは10年以上にわたり、フーシ派(正式名称アンサール・アッラー)に兵器や資金、訓練を提供してきた。ただ、国連の武器禁輸措置に違反してフーシ派に武器を供与していることを公式には否定している。
ロイターが取材した専門家らによると、イラン自身が戦争や制裁によって財政・軍事面で圧力を受ける一方、フーシ派はイランの支援を受け、無人機やミサイルを含む兵器を自ら組み立てる方法を習得した。
英キングス・カレッジ・ロンドンで安全保障研究を専門とするアンドレアス・クリーグ氏によると、当初はイランの革命防衛隊と、レバノンに拠点を置く親イラン武装組織ヒズボラのメンバーが、ミサイルシステムやその運用に関する知識をフーシ派に伝えた。
同氏は「イエメン軍の元技術者や、現地で訓練を受けた新世代の専門家の増加が、こうした能力を組織に定着させる助けになった」と述べた。
「イランは単にフーシ派に兵器を供給したのではない。現地で軍需産業の技術を習得していく仕組みづくりを支援した。イランからの直接の供給ルートが断たれても、この仕組みを解体することは次第に難しくなっている」
イランのアナリストらは、フーシ派がこうして、イランにとって最も費用対効果が高く、価値のある軍事的な代理勢力の一つになったと指摘する。
イラン革命防衛隊の元政治顧問、ハミッド・ニクー氏は「革命防衛隊は先を見据えていた。フーシ派が装備や兵器を(イランから)直接受け取れなくなった場合や、それらが米国の同盟勢力に押収された場合に何が起きるかを考えていた」と述べた。
同氏によると、この戦略には、軍民両用部品を組み合わせて無人機や、さらには弾道ミサイルを製造する方法をフーシ派に教えることも含まれていた。
「イランは要するに、フーシ派に魚の釣り方を教えた」
イエメンでフーシ派と戦うサウジ主導の連合軍は、フーシ派がサウジの都市に向けて発射したミサイルを複数迎撃し、フーシ派の兵器貯蔵施設や発射拠点127カ所を破壊したとしている。
連合軍のマリキ報道官は記者会見で、フーシ派が「地域の勢力」の支援を受け、弾道ミサイルや無人機、爆発物を積んだ高速艇など、高度な軍事技術を獲得したと述べた。
<兵器の輸入元と技術を多角化>
フーシ派の兵器製造における大きな強みは、イラン製の装備やイランからの輸入品だけに依存していないことだ。
紛争兵器研究所(CAR)は今週公表した報告書で、フーシ派が中国から出荷された部品を使い、高度な中距離弾道ミサイルの製造を試みていたと指摘した。国際的に承認されているイエメン政府が、こうした部品の積み荷を押収したという。
クリーグ氏は「中国は商業上の調達先として特に重要になった。一方、イランは引き続き、専門的な軍事技術や技術的知見、商業ルートでは入手が難しい部品を提供している」と述べた。
さらにフーシ派は兵器の有効性を高めようと、人工知能(AI)の活用も試みてきた。
米アンソロピックは先月、「イエメン北部を拠点とする脅威をあおる一団」が同社のAIアシスタント「クロード」を利用し、誘導ロケット弾、射程2000キロメートル超を目指す弾道ミサイル、極超音速滑空体を組み込んだ派生型ミサイルのソフトウエア開発を進めていたと明らかにした。
<戦争による疲弊、弾薬の枯渇>
フーシ派が兵器製造能力を高める一方、域内の米同盟国は、2月下旬に米国とイスラエルによるイラン攻撃で始まった戦争以降、防空体制に大きな負担がかかっている。
米国は自国の基地や、イスラエル、湾岸諸国などの同盟国を守るため、域内に配備する迎撃ミサイルを大量に使用してきた。このため、一部の国、とりわけサウジの防衛が手薄になっている。
ジュネーブ国際・開発研究大学院の中東専門家、ファルザン・サベト氏は「サウジは軍の高度化や統合防空網の整備という点で、イスラエルやウクライナの水準にはまだ達していない。しかも、極めて困難な任務を担っている」と述べた。
同氏は、サウジは国土が広大なため、イスラエルや米軍基地を守る場合よりも、空からの攻撃への防御が難しいと指摘した。
<実戦経験>
サベト氏によると、フーシ派は近年、地域で激化した戦闘から教訓を得てきた。
フーシ派が2014年からサウジの支援する勢力と戦ったイエメン内戦は、22年に不安定ながら停戦に至った。しかし、パレスチナのイスラム組織ハマス主導の襲撃でイスラエル側に多数の死者が出たことを受け、23年にイスラエルがパレスチナ自治区ガザへの攻撃を開始すると、フーシ派はイスラエルへのロケット弾発射や、紅海を航行する船舶への攻撃に乗り出した。
今年の米国とイランの戦争の余波でイエメン内戦は再燃したが、その時点でフーシ派は新たな能力を獲得していた。
サベト氏は「彼らは手をこまねいていたわけではない」と指摘。「供給網の多角化を進めていた。実戦経験を積むにつれ、兵器をさらに高度化できるようになっている」と語った。