David Lawder Leika Kihara

[バンコク 16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のウォーシュ議長は16日、米経済の力強さについて楽観的な見方を示すとともに、エネルギーショックが続きインフレ抑制に向けた金融引き締めが行われる中でも、世界経済がこれほど「持ちこたえている」ことに驚きを表明した。

バンコクで開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会で発言した。

米国をはじめ多くの国の経済は、人工知能(AI)が主導し、他の分野にも広がる「投資の急増」の恩恵を受けていると指摘。ただ、これが短期的な需要ショックを引き起こし、インフレに上昇圧力をかけていると述べた。

ウォーシュ氏は「昨日と今日、ここで開かれた会合を終えたばかりだが、中央銀行関係者との議論において、情報交換をせず、物価高騰について同じ話を聞かないでいることは難しい」と述べた。

インフレは「共通の課題」であり「(各中銀は)世界のほとんどの地域で協調的な金融引き締めを実施している。つまり『ただ乗り』する者はいない」と話した。

米国については「われわれは物価の安定を実現することを極めて明確に示しており、約1カ月前に金融緩和を一部解除した」と述べ、9月の米利上げに言及した。

<金利の道筋は示さず>

一方、金利決定については「予断を持たない」と表明。今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げするか、据え置くかについては手掛かりを示さなかった。

ウォーシュ氏はIMFのゲオルギエワ専務理事との対談で、「FOMCの結論については予断を持たない。年内の会合で何をするか、今の時点で述べるべきだとは考えていない」と語った。

他のFRB当局者はここ数週間、ほぼ全員が追加引き締めはおそらく必要との見方を示した。ただ、大半はインフレの基調を判断するため、さらに経済指標を確認したいとしており、今月に2回目の利上げを実施する可能性は低いことを示唆した。

金融市場はこうした発言を織り込み、FRBが12月まで利上げを見送ると予想している。

今週発表された2種類のインフレ指標がいずれも予想を上回り、FRBの2%目標から遠ざかる動きを示した後も、こうした見方は変わっていない。

ウォーシュ氏が今回、短期的な政策決定に関する話題を避け、より広範な経済テーマに焦点を当てたことで、FRBが月内に利上げを行わないという見通しが一層強まった。

<AIによる豊かさへの道のりは「険しい」>

ウォーシュ氏は、AIが中期的に経済成長と生産性に及ぼす影響について楽観的な見方を示した。「実体経済」の生産性の伸びが加速し、富が増えると見込む一方、そこに至る道のりは「非常に険しい」と述べた。

「AIは明らかに、経済の供給側より先に需要側に影響を及ぼしている」と指摘。「今後12カ月ないし18カ月で雇用にどのような影響を与えるかは分からない。しかし、私と同じように、AIを有効活用する経済や国の生産性が向上し、われわれがより豊かになると信じるなら、それは非常に良いことのはずだ」と語った。

ウォーシュ氏によると、AIが生産性と雇用に及ぼす影響についてFRBに助言するために設けられた作業部会は、11月16日にサンフランシスコベイエリアで「現地公聴会」を開く。

<より強い経済へ>

ウォーシュ氏は、投資の急増がAI以外の分野にも広がり、米経済の成長に一定の底堅さをもたらしていると述べた。「つまり、この経済に一定の力強さと耐久性をもたらす追い風が数多く吹いているということだ。そのような勢いは世界の至る所で見られるわけではない」と語った。

世界経済については「地政学的な情勢や世界各地の紛争を踏まえると、5、6カ月前には予測できなかったような強靭性を示している」と指摘した。

ウォーシュ氏は、バンコクに集まった中央銀行関係者が物価安定を守るという共通の認識を持ち、それに沿って行動していると指摘。これが「成長の継続に極めて重要な、企業や家計の信頼感」をもたらしていると述べた。

「甘い考えだと思われるかもしれないが、私は楽観的に見ている。少なくとも米国は、より強く持続力のある経済となり、経済成長で世界をけん引する力を高めて、この状況を乗り越えると信じている」と語った。

<信頼性重要>

ウォーシュ氏はまた、総会に合わせて開かれたイベントで、適切な金融政策を実施するためには組織としての信頼性を不断に高める必要があり、その対象にはFRBの監督・業務運営部門も含まれると述べた。

同氏は、FRBは通貨を発行できるという特別な立場にあるが、その信頼性の方がはるかに重要だとした。

「力の真の源泉は組織としての信頼性であり、それは歴代の偉大な議長たちから受け継いだものだ」と語った。その上で「適切な政策を実施するには、その信頼性を一層高めるほかない。FRBのどの部門の業務であれ、ミスをしたり、監督や決済でつまずいたりすれば、組織としての信頼性に響く」と述べた。

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