Noriyuki Hirata
[東京 15日 ロイター] - 15日の東京市場では人工知能(AI)関連株の下げに勢いがつき、日経平均は直近高値から6000円超の下げとなった。AIデータセンター投資に向けた資金調達への懸念がつきまとう中、これまでの期待に基づく買いが巻き戻された形だが、追い証(追加保証金)が多発してセリング・クライマックス(総悲観の投げ売り)をつけるには、なお距離があるとの見方もある。
<落ちるナイフの局面>
日経平均はこの日、一時5%超下落し、約1カ月ぶりに6万4000円近辺まで値を下げた。アドバンテストが約15%安、ソフトバンクグループが9%安、フジクラが12%超安とAI関連の主力株が軒並み大きく下げたが、松井証券の窪田朋一郎チーフマーケットアナリストは「まだ落ちてくるナイフを拾っている局面だ」として、大底前の総投げとなるセリング・クライマックスには距離があるとの見方を示す。
株価下落局面の「位置」を把握するうえで注目される指標の一つに信用評価損益率がある。信用取引で買い建てている投資家がどの程度含み損益を抱えているかを表す指標で、マイナス20%を下回ると追加の担保金差し入れを求められる追い証が発生しやすい。期日までに対応できなければ損失覚悟の処分売りを迫られ、こうした投げが集中するとセリング・クライマックスにつながりやすいとされる。
松井証券店内では14日時点の評価損益率がマイナス8%。この日の急落を加味してもマイナス11%程度と松井の窪田氏はみており「日経平均で6万円を割るぐらいでないと、本格的な投げにはなりにくそうだ」と話す。
<AI株売りの背景>
AI株売りが強まった背景のひとつとして、AI向けクラウドサービス大手コアウィーブの社債や株価急落への警戒感がある。
同社の5年物CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)はこのところ、800ベーシスポイント(bp)付近の高水準にあったが、この数日で1100bpまで拡大した。社債利回りも上がっており、追加の資金調達コストの増加が警戒された。「(データセンターに大規模投資するハイテク大手の)ハイパースケーラーによる資金調達にも波及しかねないとの懸念が強まった」と大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは指摘する。
ハイパースケーラーはこれまで、本業で稼いだ現金を意味する営業キャッシュフロー(CF)で投資をまかなってきたが、今年に入って営業CFの流入額を投資CFの流出額が上回る企業が出始め、投資継続には資金調達が重要な局面に入ってきている。データセンター投資が鈍るようなら、これまで米ハイテク大手による巨額投資の恩恵が及ぶとみられていた半導体やその製造装置、周辺インフラなどの「ツルハシ銘柄」を巡るシナリオも変わってくる可能性がある。
<IPO先送り>
企業の資金需要を市場がこなせるか、懸念がくすぶる中、新規株式公開(IPO)の動向にも市場の関心は向かっている。
AI関連では、AIデータセンター関連会社でソフトバンクグループが支援するSBエナジーが米国でのIPOロードショー(投資家説明)の開始を先送りしたことが9月に報じられたほか、米ブラックストーンが支援する豪データセンター運営会社エアトランクがシンガポールでのREIT(不動産投資信託)IPOを27年に延期したと伝わっている。
市場では、10─11月にもと観測されていたAI開発企業アンソロピックのIPOが11月の米中間選挙後にずれ込む可能性が高いとも伝わっている。評価額2兆ドル規模との試算もある同社のIPOが「延期になったり(評価額が)2兆ドル規模を下回るようだと、売りの口実にされかねない」と松井の窪田氏はみている。
<焦点は企業業績>
「米中間選挙のある年の10月は海外勢が売り越す傾向にあり、きょうの下げにもつながっている可能性がある」と東海東京インテリジェンス・ラボの山藤将太エクイティマーケットアナリストは指摘する。一方、「ここから企業業績に目が向かうとすれば、買い戻しが入ってくる余地もありそうだ」という。
大和の坪井氏は、資金調達の難しさが成長途上の企業に限られる話かどうかを見極める必要があるとの見方を示す一方、目先の焦点は、10月下旬に本格化する米ハイテク企業の決算だと指摘する。「AIビジネスの収益性が確認されれば、不透明感は和らぎ得る」と坪井氏は話している。