Nick Carey Rachel More

[パリ 13日 ロイター] - 欧州で地場製造業の強化を狙った新たな現地調達規則の導入が議論されているが、中国の自動車メーカーは既に欧州各地で工場やサプライチェーンの整備を進めている。規則の詳細が固まる前に先手を打ち、市場への足場固めを急いでいる格好だ。

欧州連合(EU)が検討している「メイド・イン・ヨーロッパ」規則は、既に提案された産業加速化法の一環として、域内での生産や調達を促し欧州の産業基盤を強化することを目的としている。EU市場への参入を目指す海外メーカーに対しても、欧州での生産拡大や欧州サプライヤーの利用を求める内容になる見通しだ。

こうした構想が打ち出された背景には、中国メーカーが欧州市場で急速にシェアを伸ばし、今後もさらなる参入が見込まれている状況がある。

ただ、この「メイド・イン・ヨーロッパ」を巡っては、どの国を対象地域に含めるべきかについて欧州内部で政治的な意見対立が起きている。一方、中国メーカー各社は結論を待つつもりはないようで、現地化戦略を前倒しで進め、規則が確定する前から欧州での生産体制やサプライヤーネットワークの拡充に取り組んでいる。

世界最大の自動車市場である中国国内で、電気自動車(EV)の価格競争激化や販売鈍化に直面している中国メーカーにとって、欧州は重要な成長市場という意味合いを持つ。

長安汽車 の幹部の1人は、現在開催中のパリモーターショーで記者団に「欧州での生産能力構築と事業機会の開拓に取り組んでいる」と述べた。この幹部の話では、欧州サプライヤーと踏み込んだ協議を行うため、既に2度欧州を訪問したほか、欧州メーカーとの共同生産についても協議している。

長安汽車は、欧州での年間販売台数を2028年までに18万台、30年までに35万台へ拡大する計画だ。同社の社長は、初の欧州生産車を27年初めにも投入したい考えを示しており、これはEUの現地調達規則が発効するとみられる時期よりかなり早い。

小鵬汽車 、奇瑞汽車(チェリー) 、広州汽車集団(GAC), など他の中国メーカーも、欧州のサプライヤーを軸とした現地生産計画を進めている。小鵬汽車のイエチン・ジェン副社長は、欧州での新たな生産能力について「『メイド・イン・ヨーロッパ』規則の発効と同時期に生産を開始したい」と語った。オーストリアでは既にマグナ が小鵬汽車向けEVを生産している。

複数の業界関係者からは、中国メーカーの動きがEUの政策立案よりも速いことから、最終的な規則がどれほどの効果を持つのか疑問視する声も聞かれる。米自動車業界団体「自動車イノベーション連盟」のジョン・ボゼラ最高経営責任者(CEO)は、米国では、欧州は中国メーカーへの対応が遅れた「教訓」と見なされていると明かした。

米上院では中国製自動車を恒久的に禁止する法案の審議が進められており、ボゼラ氏はその背景としてデータ安全保障への懸念があると説明する。「欧州では市場の現実が先に進み、それに対応する形で政策が打ち出されているように見える。一方の米国では、各方面が『問題を事前に解決しよう』としている」と語った。

<政策で進出阻止困難か>

パリモーターショーで講演したフォルクスワーゲン のオリバー・ブルーメCEOは「強い欧州は強い産業なしには成り立たない」と述べ、「メイド・イン・ヨーロッパ」への支持を表明した。

とはいえ現在の案ではトルコ、英国、モロッコといったEU非加盟国が対象外で、これらの国々は欧州の自動車産業と深く結び付いた生産・調達拠点となっている。

そのため当該諸国に生産拠点を持つメーカーや業界団体は「欧州」の定義をEU加盟国に限定すれば、長年かけて構築された広域的なサプライチェーンを損なうと反発。トルコ自動車産業輸出業者協会(OIB)は、同国の自動車産業がEU域内で25万人分の雇用を支えていると主張する。

フォードがトルコで生産する電動商用車「トランジット」の場合、部品価値の50%超がEU域内から調達され、電池はハンガリーやポーランド製で、そのほかドイツやイタリアなどからも部品供給を受けている構図だ。OIBのケマル・ヤズジュ会長は「われわれはともに成長してきた。トルコは欧州自動車産業の不可欠な一部だ」と強調した。

EUは現地調達規則の策定と並行して、中国との間でハイブリッド車の域内輸入を半分未満に減らす協定もまとめている。

この協定について問われた奇瑞汽車の尹同躍会長は、まず詳細を検討したいと述べるにとどめたが、それ以上に欧州事業の拡大に関心を向けていて「設計も現地で行いたい。現地のエンジニアリング、現地生産、そして現地のサプライチェーンを構築したい」と語った。

自動車アナリストのフェリペ・ムニョス氏は、中国メーカーは「何でも非常に速く実行する能力」を示しており、政策を論じることによって中国勢が欧州進出を思いとどまる公算は乏しいと見込む。

実際、EUが24年10月に中国製EVへ追加関税を課した際、多くの中国メーカーは関税対象外のプラグインハイブリッド車へ軸足を移した。ムニョス氏は「メイド・イン・ヨーロッパ」によって中国メーカーにとって事業環境は多少厳しくなると予想しつつも「それでも彼らを止めることはできない」と言い切った。

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