[フランクフルト 13日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のチーフエコノミストであるレーン専務理事は13日、ユーロ圏企業による人工知能(AI)の利用拡大が労働者の賃上げ交渉力を抑制する可能性があるとの見解を示した。また、AIへの巨額投資が金融環境を大幅に引き締めている可能性も指摘した。
エネルギー価格高を背景にインフレ率がECBの目標の2%のほぼ2倍に達する中、政策当局者は物価上昇の2次的影響の兆候を探っている。ただ、これまでのところ、特に賃金の伸びにはそうした兆候が見られないと判断している。
レーン氏は、AIは雇用動向を変えていないものの、企業の採用計画は低調で、高インフレを補う賃上げを求める労働者の交渉力が制限されていると説明。高インフレにもかかわらず賃金の伸びが鈍化している理由として、一つの可能性を示した。
ダブリンでの講演で「AIが一部の職種を代替する可能性も、労働者の交渉力を弱め、賃金の伸びを抑え、総所得に占める労働所得の割合を低下させる恐れがある」と述べた。
現行の金融政策には直接言及しなかったが、世界各地の企業がAI投資の資金を賄うために巨額の借り入れを行っており、それが借り手全般の調達コストを押し上げ、ECBの政策判断に影響するほど資金調達環境を引き締めていると指摘した。
「ユーロ圏の債券市場への波及は、長期金利の上昇がユーロ圏にとって金融環境の大幅な引き締めとなっていることを意味する」とし、「これはECBが適切な金融政策スタンスを決定する上で重要な要素だ」と述べた。
ECBはインフレの定着を防ぐために利上げを進めている。一部のエコノミストは、資金調達環境全般が引き締まれば、物価上昇を抑えるためにECBが行う引き締めは小幅で済む可能性があると指摘しており、今回の発言は重要な意味を持つ。
レーン氏はまた、AIが長期的に経済に重要な影響を及ぼし、潜在生産量とトレンド成長率を押し上げ、経済の潜在的な「スピードリミット」を引き上げる可能性があるとも述べた。
同氏は「欧州にとって、予想される生産年齢人口の減少傾向がもたらす経済的影響をAIが相殺する可能性は、特に価値がある」と語った。