Michael Holden

[ロンドン 13日 ロイター] - 英国内の情報収集を担う情報局保安部(MI5)のマッカラム長官は13日の年次講演で、イランが英国内の軍事施設など「より重要な標的」への攻撃を試みる動きを強めているほか、ロシアがウクライナ支援国に対するハイブリッド戦を拡大しているとの認識を示した。

またマッカラム氏は、人工知能(AI)の悪用に関する最大の懸念として、テロ組織が生物兵器を開発したり、新たな病原体を作り出したりする可能性に言及。同氏によると、国家が関与する脅威は過去10年間で4倍に増加した。MI5は現在、この分野に冷戦期を上回る資源を投入しているという。

バーナム英首相は12日、米軍爆撃機が使用する英空軍フェアフォード基地を狙ったとされる攻撃計画について、イランが関与した可能性が「極めて高い」と述べた。この事案を受けて警戒態勢が強化され、トランプ米大統領は同基地から航空機を撤収させた。

英国当局は近年、イランが反体制派やイスラエル関連、ユダヤ系施設などを標的とした計画や暗殺未遂に関与していると非難してきた。これに対しイランは、フェアフォード基地の事案や英国内でのその他の敵対的活動への関与を否定している。

ロシアも英国や他の西側諸国での敵対行為への関与を否定しているが、マッカラム氏はロシアを「最大の侵略者」と位置付けた。

在英ロシア大使館は声明で「欧州で起きるあらゆるサイバー攻撃や無人機事案、犯罪事件を証拠もなくロシアのせいにするのは都合が良いだけだ」と述べるとともに、ロシアの脅威を強調することが、安全保障権限の拡大や軍備強化、国内問題からの目くらましに利用されていると主張した。

マッカラム氏はフェアフォード基地の事案については捜査中のため詳細には触れられないとした一方で「今年に入り、イランは軍事施設のようなより重要な標的を狙う方向へ大きく転換した。フェアフォード基地の事案は特殊なものではない。同様の事例は英国に限らず世界各地で発生している」と指摘した。

同氏の説明では、過去1年間にイランと関連する活動に絡み50人超が逮捕された。

記者団から、イランが爆発物を搭載したドローン(無人機)などを用いた複雑な攻撃を行う能力を持つかと問われると「近年の英国で実際に確認された事例を見る限り、そのような高度な能力には達していない。しかし、中東地域など自国に近い場所では、イスラム革命防衛隊が従来型およびハイブリッド技術を用いた、より攻撃的で高度な作戦の経験を積んでいることは明らかだ」と語った。

マッカラム氏はロシアに関しては、通常戦争に至らない水準での工作活動を展開していると分析。ドイツの空港で発生した貨物機への無人機攻撃未遂や、ポーランドのエネルギーインフラに対するサイバー攻撃を例に挙げた。

その上で「ウクライナでの軍事的成果が乏しく、人的損失も甚大な時期に、ロシアが他の欧州諸国の国内を不安定化させようとしているのは偶然ではない」と述べた。

AIについてマッカラム氏は、テロ組織が偵察活動や攻撃手法の改良にAIを活用しているとの認識を示した。

さらに「まだ現実化してはいないが、私が最も重視している悪用シナリオは、既存あるいは新たな生物兵器の脅威をAIが一段と高めることだ」と述べ、生物兵器分野が情報機関として特に注視している領域だと強調。「こうした危険は現実のものだ」と警鐘を鳴らした。

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