設備を変えることで、取り戻せる「できること」
その考え方を象徴する出来事がある。福祉施設の管理者がショールームを訪れた際、ある利用者について「機械浴しか選択肢がない」と考えていた。しかし、浴槽レイアウトや手すりの位置を変え、後付けできる浴室リフトを活用するなど、その人の身体状況に合わせた入浴方法を知ることで、別の選択肢が見えてきた。
その後、利用者はプライバシーが確保された個室で入浴できるようになった。管理者から寄せられたのが、「身体能力ではなく、設備環境が制約になっていたのかもしれない」という言葉だった。
このエピソードが示すのは、介護における「できる」「できない」の境界線が、必ずしも本人の身体能力だけで決まるわけではないということだ。環境の設計次第では、介助を受ける人の選択肢を広げながら、介助者の動作や身体的負担を減らせる可能性がある。
wellsをめぐる一連の取り組みは、2013年にグッドデザイン賞を受賞した。2026年には、マイクロバブル技術とwells浴室を融合した「wellsマイクロバブル浴槽」を発売。同社は今後も、高齢者の自立支援と介護従事者の負担軽減を両立する浴空間づくりを進める方針だ。
介護人材が限られるなか、すべてを人の頑張りだけで支え続けることは難しい。だからこそ、人に合わせて環境を変え、「できること」を増やしていく視点が重要になる。入浴という日常を守る工夫は、高齢者の尊厳や自立だけでなく、介護現場を支えることにもつながる。そうした身近な環境づくりの積み重ねによって、持続可能な高齢社会は着実に形づくられていく。
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