国道58号線──アメリカ統治時代に整備されたハイウェイNo.1(軍道1号線)にルーツを持つ沖縄の大動脈である。沖縄県知事選は最終盤、最も重要と言われる「3日攻防」に入っていた。その国道58号線が9月10日、明るい緑に染まった。
翁長雄志、玉城デニーと3期12年にわたって続いた革新県政に挑んだ古謝玄太陣営のカラーである。那覇市中心部である明治橋交差点から浦添市勢理客(じっちゃく)までのおよそ4.5キロ、2000人ほどの人々が「県政奪還」「沖縄を前へ」と書かれたのぼりやポスターを一斉に掲げたのだ。多くは現役世代、とりわけ目立つのが若年層である。
車社会の沖縄で、票の掘り起こしを狙ういわゆる「Vロード」と呼ばれる選挙戦術である。行き交う車からちらっと横目でみる人もいれば、クラクションを鳴らして応えることもある。緑のポロシャツに身を包んだ古謝本人もVロード中に選挙カーを止めて、スポットでマイクを握った。
象徴的なシーンがあった。
古謝に先駆けてVロード沿いを小走りで駆ける一群がいた。先頭で引っ張るのは2人だ。一人は石油販売会社りゅうせきの社長、会長を歴任した那覇商工会議所会頭の金城克也、もう一人は名護市を拠点に建設、ホテル産業を展開するゆがふグループを率いる前田貴子である。
金城は古謝陣営の選対本部長、そして前田は後援会長という肩書きがついている。すれ違いざま、現状の評価を聞こうと声をかけると、前田は満面の笑みで「勢いがあります〜」と返してきた。大物財界人の軽快な歩調に陣営のすべてが現われていた。
そんな光景を見ながら「財界がまとまれば、これ以上強いことはない」──陣営幹部は強気な言葉を発するのだった。復帰後生まれの初の県知事となる42歳が、歴代最多得票42万3124票を集める流れはここに完成していた。