Matt Spetalnick

[ワシントン 25日 ロイター] - トランプ米大統領は今週、国連総会での演説や中国の習近平国家主席との首脳会談を通じ、国際舞台で存在感を改めて誇示しようとした。だが、こうした一連の精力的な外交活動も、トランプ氏が内外の問題に苦しんでいるという見方を払拭するには至っていない。

イランとの戦争拡大で米国内のガソリン価格が上昇し、支持率は急落。同盟国との関係が悪化する一方、人工知能(AI)分野では中国の追い上げが激しくなっている。

力の限界が露呈する中、トランプ氏は中東危機からウクライナ戦争まで、さまざまな問題で各国首脳の抵抗に直面し始めており、外交課題が行き詰まっているとの印象を与えている。11月の中間選挙の結果次第では、同氏の政治的制約が一段と強まる可能性がある。

それでも、22日の国連演説は、米国が第2次世界大戦の惨禍から築き上げたルールに基づく国際秩序をトランプ氏がいかに揺るがしてきたかを鮮明に示した。

平和の実現を使命とする国連の演壇で、トランプ氏はイランが合意に応じなければ「壊滅させる」と改めて威嚇した。ベネズエラへの威圧的な対応については「戦利品は勝者のものだ」と正当化し、国際的な目標を達成するために今後も米軍を投入する可能性を示唆した。

こうした強硬姿勢とは裏腹に、24日の習氏との会談では、トランプ氏は自分より優位に立つとみられる相手と向き合うことになった。米国がイラン戦争による経済的打撃に苦しむ一方、中国は世界各国との貿易を急拡大させている。

<米中首脳会談の成果は限定的>

こうした状況下で行われた習氏の国賓訪問は、AI、貿易、台湾、イランなど難題が山積しているにもかかわらず、儀礼ばかりが目立ち実質的な成果に乏しいものとなった。最も具体的な成果は、当初11月に期限を迎える予定だった米中間の貿易休戦を2カ月間延長することにとどまったようだ。

トランプ氏は両国の意見の相違を公の場で表明することに消極的だった。一方、中国国営メディアによると、習氏は非公開の会談で台湾独立に反対するよう求めた。

対立を避けるようなトランプ氏の姿勢は、関税を前面に出した従来の強硬路線とは大きく異なっていた。その背景には、ハイテク製品や自動車の製造に欠かせないレアアース(希土類)を中国が掌握している事情がある。

オバマ政権で外交政策顧問を務め、現在は戦略コンサルティング会社グローバル・シチュエーション・ルームを率いるブレット・ブルーエン氏は「トランプ氏は力が正義となる世界にわれわれを引き戻そうとしている」と指摘。「だが、習氏と台頭する中国の力を前にすると、途端に腰が引けるのは注目すべきことだ」と述べた。

<膠着するイラン戦争>

トランプ氏の過密な外交日程に影を落としていたのは、 同氏が2月28日にイスラエルと共に始めた対イラン戦争だ。戦争は7カ月近くにわたって続き、世界のエネルギー供給を混乱させ、最近ではイエメンや紅海の航路など他の地域にも拡大している。

経済面でも軍事面でも打撃を受けながらイランが抵抗を続けていることは、トランプ政権2期目で最も解決困難な外交課題となっている。

イラン戦争は国民に極めて不人気で、トランプ氏の支持基盤も分断している。与党共和党が過半数議席を失う恐れのある中間選挙で、同氏が代償を払わされる可能性がある。

中間選挙後にトランプ氏の影響力が衰え始める可能性を見据え、各国首脳は既に備えを進めているようだ。国連総会では、名指しこそ避けたものの、米国の友好国の一部がトランプ氏批判を展開した。

フランスのマクロン大統領は、世界が「弱肉強食の論理に逆戻りする」ことに警鐘を鳴らした。各国は力と威圧が支配する世界と「文明的な国際社会」のどちらを選ぶかを迫られていると述べた。

ブラジルのルラ大統領はトランプ氏を批判する形で、10月に予定される自国の大統領選への内政干渉を非難した上で、「われわれに必要なのは、自国の海域を哨戒する空母ではない。犯罪を助長する武器や資金の流れを食い止めるための協力だ」と訴えた。

ホワイトハウス当局者は「(トランプ氏が)重視するのは見せかけの姿勢ではなく結果だ」と述べた。また、一部の首脳の公の発言は、非公開の場でトランプ氏に伝えた内容と異なると指摘した。

<トランプ氏への抵抗>

トランプ氏はウクライナとロシアに限定的なエネルギー停戦を受け入れさせようとしたが、目立った進展を生まず、影響力の低下を浮き彫りにした。

また、グリーンランドでの米軍の駐留拡大に関してデンマークおよびグリーンランドと合意したことをアピールしたものの、グリーンランドを「所有する」という当初の要求からは後退する結果となった。

ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長はXに「1年前にはトランプ氏にあえて逆らう国はほとんどなかった」と投稿し、「今ではカナダ、欧州、中国、イラン、ロシアなどが、以前よりもはっきりノーと言うようになっている」と記した。

トランプ氏自身も、自らの国際的な影響力が実際にどれほど残されているのか疑問を抱いている様子を垣間見せる場面があった。

同氏は演説の中で、AIを「スーパーインテリジェンス」(超知能、SI)に改称することを提案。その上で「私に力があるかどうか見てみよう。あるかもしれないし、ないかもしれない。いずれにせよ、間もなく分かるだろう」と述べた。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。