スマートフォンでSNSを開くと、おすすめ動画では「マノスフィア」のインフルエンサーが語る。「男は搾取されている」「フェミニズムが男を弱くした」──こうした言説が、失恋や経済的不安に悩む若年男性の孤独に付け込む。
男性の健康問題を調査する慈善団体モーベンバーが2024年に実施した調査では、アメリカの16〜25歳男性の約3分の2が日常的にマノスフィアの動画を視聴していた。
マノスフィアのコンテンツに触れているうちに、一部の男性は「レッドピル」の深みにはまる。映画『マトリックス』で「真実を見るための薬」として登場したこの言葉は、女性の権利が優先される社会において、男性が「賃金奴隷」として不利益を被っていると主張する。さらに絶望が深まると、女性が男性に見いだす魅力は外見など遺伝に基づくもので、努力や振る舞いでは変えられないという宿命論的な世界観「ブラックピル」の思想に傾倒するようになる。
レッドピル/ブラックピル思想は女性への嫌悪や敵意を助長し、暴力事件にもつながっている。21年7月、オハイオ州在住の自称「インセル(不本意な禁欲者)」トレス・ジェンコ(当時21歳)が、オハイオ州立大学の女子学生を標的にした大量射殺を計画したとして逮捕された。ジェンコは犯行前、「憎悪や嫉妬、復讐のために女性を虐殺する」という声明を記しており、過去にも男性至上主義のオンラインコミュニティーに自身が行った女性への嫌がらせ行為について投稿していた。
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