Takahiko Wada
[さいたま市 27日 ロイター] - 日銀の氷見野良三副総裁は27日、「これまで以上に物価の上振れリスクを意識する必要がある」とした上で、「毎回の金融政策決定会合において、しっかりと議論してまいりたい」と述べた。基調的な物価上昇率が2%目標を超えて上振れていくリスクが顕在化し、経済に悪影響を及ぼさないように、基調物価を2%程度で安定させていく観点が重要だと話した。
埼玉県金融経済懇談会であいさつした。市場では9月会合での政策金利引き上げを織り込む動きが進んでおり、東短リサーチと東短ICAPによると利上げ確率は80%台半ば。氷見野副総裁は「毎回」の決定会合で「しっかり議論」する姿勢を示したが、特定の時期に言及せず、発言の最中に為替はやや円安に振れた。
氷見野副総裁は政策金利の調整のタイミングやペースは「中東情勢や人工知能(AI)関連需要の拡大、為替相場の変動の影響を含め、経済・物価の中心的な見通しが 実現する確度やリスクを点検しながら、検討していく方針」と説明した。
基調物価については、従来は「2%に向かってきちんと上がっていくか、2%に到達してそれが定着するか、ということを主な着眼点として政策判断をしてきた」が、基調が2%に迫る中で、今後は「2%を超えていく可能性はどうか、ということも考えながら政策判断をしなくてはならない局面に変わってきている」と述べた。
氷見野副総裁は、金融環境は「緩和した状態が維持されており、引き続き、経済活動をしっかりサポートしていくと考えられる」と指摘した。利上げすれば名目の利払い費は増えるが、「利上げが遅れてインフレが高進し、急な利上げが必要になるような事態をあらかじめ防いでおくことが、中小企業や住宅ローンの借り手や財政にとっても、最終的には望ましいのではないか」と話した。
さらに、「私どもは金融引き締めではなくて金融緩和の度合いの調整をしている」と強調し、日銀の利上げが政府が推し進める成長投資と整合的でないとの見方に反論した。「供給制約の時代に潜在成長率を引き上げていくためには、効率が高く戦略的に有望な投資に重点的に資源配分がなされるよう、金利のメカニズムが機能することが肝心だ」と述べた。
氷見野副総裁のあいさつについて、野村証券のエクゼクティブ金利ストラテジスト、岩下真理氏は「7月の日銀金融政策決定会合と内容がほとんど変わっていない印象を受け、新たなメッセージは出てこなかった」とみていた。
SBI新生銀行の森翔太郎シニアエコノミストは、9月会合での利上げへの直接的な言及や利上げペースの加速を示唆するような前のめりな発言はなかったものの、「毎回の金融政策決定会合において、しっかりと議論してまいりたい」と述べたことは「9月会合での利上げを否定するものではなく、想定の範囲内でのタカ派だった」とコメントした。