<認知戦や外国からの情報操作をめぐる調査は、SNS上の偽アカウントや投稿の分析に偏ってきた。だが検証すると、攻撃主体や脅威水準の特定では、WEBネットワーク調査の有効性が浮かび上がった>
認知戦やFIMI(外国からの情報操作と干渉)を扱うレポートは、SNS上の偽アカウントネットワークの分析を軸に広がってきた。日本でもテレビや新聞で「専門家」がXの投稿の分析をしてみせている。多くの場合、SNSの分析に使用されるのはアメリカやイスラエル製のツールであり、多くの国で実績がある。
ただし、その実績は販売と運用の実績であり、効果の実績ではない。
ちょっと考えてみればわかるが、アメリカとイスラエルの国際的な評価がこの数年間でプラスに動いたかマイナスに動いたか、あるいはアメリカの国内の分断や不安定さが改善されたかを考えれば、これらのツールがあまり事態の改善に役立ってはいない(もしくは悪化にも改善にもほとんど関係していない)ことがわかるだろう。
その理由は多々考えられるが、わかりやすいのは影響の評価と検証が行われていないために対処の優先度が決まらず、対応組織も決まらないことがある。
しかし、ほとんどのレポートでは影響評価や検証が手薄で、脅威水準の評価も弱い。中心になっているのは、「なにが起きたか」という事例の分析である。
近年のSNSを対象とした調査で目立つのは、影響が軽微もしくはほとんど確認できなかったという記述だ。そもそも対策に結びつくことのないものをレポートしているのか? と思いたくなる。
地味な話題であるが、認知戦のレポートが備えるべき基本的な項目である脅威水準とアトリビューション(攻撃主体の特定。帰属とも言う)に注目して、使えるレポートのポイントを考えてみたい。
2022年から2026年に公開された主要な認知戦のレポート827件(2020年公開の日本の資料2件を含む)をチェックしてみると、脅威水準の記述が最も精緻なのはSNSを対象とした調査ではなかった。
ウェブサイトとそのネットワークを主たる対象とする調査(本稿ではこれを「影響工作WEBネットワーク調査」と呼ぶ)の方が脅威水準の記述が精緻でアトリビューションも同等だった。