Casey Hall Dominique Patton

[上海/パリ 4日 ロイター] - 中国では、不動産市場の長期低迷と消費者心理の悪化を背景に、高級品消費を巡る価値観が変化し、高級ブランドのバッグよりも高級スキンケア製品への支出が優先される傾向が強まっている。

アナリストによると、最近の企業業績からは、中国の中間所得層による「憧れ消費」が、エントリークラスの高級ブランド品から、高級スキンケアや化粧品、香水などの「プレステージ・ビューティー」分野へ移りつつあることが読み取れる。プレステージ・ビューティー商品は一般的な化粧品より大幅に高価格帯に位置付けられている。

エスティローダーやロレアルなどの化粧品大手は、中国で高級ラインの売り上げが今年好調に推移していると報告。一方でエルメスや、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)といった高級ブランド大手の見方では、中国市場の需要は「横ばいからやや改善」にとどまる。

上海を拠点とするコンサルティング会社フォーサイト・パフォーマンス・パートナーズの共同創業者ジャック・ロワゼン氏は「中国の憧れ消費層は節約志向になったわけではない。購入可能なカテゴリーでは最上位の商品を選ぶ半面、手の届かないカテゴリーの入門商品は避けるようになった」と分析する。

<爆発的成長の時代は幕切れ>

中国の高級品市場は、経済成長と所得増加を背景に過去10年で急拡大した。だが成長率の鈍化と不動産不況による消費者信頼感の低下を受け、バッグや腕時計などの高級品市場は2024年に大幅な落ち込みを記録した。その後の回復も不安定で、昨年後半には売り上げが持ち直したものの、今年は力強さを欠く滑り出しだった。

経営コンサルティング会社ローランド・ベルガーの上海拠点パートナー、ジョナサン・ヤン氏は「これは一種のパラダイムシフトだ。若い消費者は高級ブランド(をステータスとして所有すること)自体に対する執着が薄れており、ブランド側はロゴや職人技だけでなく、より共感を呼ぶための付加価値を提示する必要がある」と指摘する。

オリバー・ワイマンとタックスフリー・ワールド・アソシエーションの調査では、中国の富裕層消費者の「今後1年間の支出意向」は高級美容分野で特に高く、支出を増やすと回答した割合は37%だった。逆に革製品で同様に回答した割合は4%にとどまった。

オリバー・ワイマンのプリンシパル、ケネス・チョウ氏は「スキンケア製品は価格が比較的手頃で定期的な補充が必要な上に、自己投資やセルフケアとして正当化しやすいため、不透明感がある状況でも購入が続く。革製品は高額でぜいたく品としての性格が強く、購入を先送りしやすい」と説明する。

ロレアルのニコラ・イエロニムス最高経営責任者(CEO)は先週、中国における高級ブランドおよび皮膚科学スキンケア市場全体の成長率が約7%に達し、ここ数四半期を大きく上回る伸びを記録していると述べた。また「ランコム」や「ヘレナ・ルビンスタイン」など同社の高級ブランドは、さらに高い成長を遂げているという。

直近四半期の北アジア地域における増収の最大の原動力は中国市場で、高級化粧品部門「リュクス」の中国での売上高は10%増加した。

エスティローダーのステファン・ド・ラ・ファブリエCEOも今年、同社は4月1日に始まった27会計年度に高級美容市場の成長加速を見込んでおり、中国市場では5%前後の成長を予想していると語った。

<革製品依存ブランドが苦戦>

一方、革製品への依存度が高い高級ブランド各社の状況は、それほど明るくない。エルメスやLVMHを含む多くの高級ブランドは香水や化粧品事業も展開しているが、中国の美容市場で主力となっているスキンケア分野の存在感は比較的小さい。

エルメスとLVMHの経営陣は、中国市場の需要についてここ数カ月で大きな改善は見られないと述べており、政府の景気刺激策や株式市場の回復にもかかわらず、消費者心理がなお脆弱だとの見方を裏付けている。

LVMHのセシル・カバニス最高財務責任者(CFO)は、上半期の中国人消費者による支出はほぼ横ばいだったと説明。「グッチ」の親会社ケリングも、第2・四半期の中国売上高が引き続き前年を下回ったと明らかにした。

ケリングは過去の中国戦略の失敗を修正しようとしているが、ルカ・デメオCEOは「中国は世界でも最も厳しく競争の激しい市場の一つになりつつある」と語った。

<「YOLO」から「YONO」へ>

エルメスのアクセル・デュマCEOは、中国市場に関して「著しい改善は見られない。回復というより安定している状態だ」との見方を示した。

デュマ氏が消費者心理を測る指標として注目しているのが豚肉価格で「現在は非常に低い水準にある」と指摘。「楽観的な気分や人生を楽しもうという気持ちの回復を示す反発を待っている。それこそが私たちの商品が提供したい価値だからだ」と話す。

ただフォーサイト・パフォーマンス・パートナーズのロワゼン氏は、たとえ消費者心理が改善しても、中国の中間所得層がかつてのようにエントリークラスの高級ブランド品へ大量に戻ることはないと予想。「最も苦戦しているブランドは、消費者が戻ってくるのを待ち続けているブランドだ。しかしその戦略が報われるとは思えない」と付け加えた。

ロワゼン氏は「高級品に関して言えば、中国の中間層は『You Only Live Once=YOLO(人生は一度きりだから好きなものを買う)』から『You Only Need One=YONO(必要なのは一つだけ)』へ変化した」と表現している。

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