ドイツ警察は7月26日、首都ベルリンで前日に起きたテロ事件の捜査中、刃物を持って突進してきた容疑者を射殺したと発表した。
この容疑者は過去に過激派組織「イスラム国」(IS)に加わろうとして警察にマークされていた人物だ。性的マイノリティーのイベントに単身車で突入し、刃物で人々を襲って多数の死傷者を出した。
ISは2010年代にヨーロッパで起きた文化イベントを標的とする複数のテロ事件で犯行声明を出している。最近では、2024年夏にオーストリアの首都ウィーンで予定されていたテイラー・スウィフトの公演を狙ったテロ未遂事件も、ISに傾倒した若者らが計画したものだった。
18年までにISは支配地域をほぼ失い、テロ活動もこの10年で大幅に減少した。それでも「IS主義」とも呼ぶべき有害なイデオロギーは今なお一部の若いムスリムを怒りの暴発に駆り立てている。
スウィフトの公演を狙ったテロを計画した一味にはイスラム教徒のオーストリア人が2人いた。1人は北マケドニア、もう1人はトルコとクロアチアにルーツを持ち、2人とも当時は10代後半の若者だった。ベルリンのテロの容疑者も移民2世で、21歳のレバノン系イスラム教徒だ。
こうしたプロフィールは、イスラム主義に詳しい政治学者のオリビエ・ロワが17年に英ガーディアン紙に寄稿した論考と一致する。ロワによれば、西側でISに傾倒してテロを企てるのはおおむねイスラム教徒の家庭で育った移民2世か、出自を問わずイスラム教に改宗したヨーロッパ育ちの若者だ。
ロワによると、イスラム教徒の移民2世は親もさほど厳しく宗教的な習慣を守っていないため、たいがい世俗的な生活を送り、アルコールや違法ドラッグに手を出す若者もいる。中には犯罪に手を染める連中もいて、何らかのきっかけで(多くは服役中に受刑者仲間に感化されて)「信仰に目覚め」、親世代よりも厳格で過激なムスリムになる。
強調しておかねばならないのは、こうした若者はヨーロッパに暮らすムスリムの移民2世のごく一部にすぎないこと。少数の移民家庭の子供たちが親世代に反抗して、親よりも熱烈なムスリムであることを誇示しようとする。子供がヨーロッパでより良い生活を送るために全てを犠牲にする移民1世も、祖父母や親たちの世代よりもヨーロッパ社会になじんだ移民3世も、ISの勧誘にはまず乗らない。
ベルリンのテロ容疑者の出自が分かると、ドイツのアレクサンダー・ドブリント内相は事件を「イスラムのテロ」と呼んだ。だが「イスラム主義のテロ」と呼ぶべきだった。
「イスラム主義」はISなど過激派組織のイデオロギーを指す言葉だが、「イスラム」と言えばイスラム信仰そのものを指弾することになる。欧州各国の右派政党や右派の論客はこの事件を移民排斥の口実として利用するだろう。
だが反イスラム感情をあおってもテロはなくならない。将来に希望が持てず鬱屈した怒りが渦巻いているからこそ、若者たちはIS主義に心酔するのだ。社会から疎外され絶望感に駆られた若者は、過激派思想に容易に染まる。
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Ibrahim Al-Marashi, Adjunct Professor, IE University; California State University San Marcos
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