
KTX-イウムに乗り込む乗務員 (撮影=筆者)
近年は政府の支援も
高速鉄道輸出国である日本や中国、フランスなどは官民一体となって市場参入に取り組むが、韓国政府は輸出支援を行うことはなく、現代ロテム社も現代=起亜自動車グループから引き継いだ軍用兵器の輸出に力を入れていた。
政府がはじめて輸出支援に取り組んだのは2015年のことである。この年、国土交通部、韓国鉄道公社KORAIL、鉄道施設公団といった鉄道関係者がマレーシアとシンガポールを訪問。クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道へ車両を売り込むためだったが、2018年にマレーシア側の予算見直しで計画自体が棚上げとなり、輸出機会は訪れなかった。
欧州各社も輸出は動力分散方式へ
韓国が輸出に活路を見出せないなか、KTXを支援したフランスのアルストム社は2000年にフィアットの鉄道部門を買収。これによって自国向けを動力集中方式としながら海外向けについては中国向けCRH5型やイタリア向けAGVなど動力分散方式にシフトした。ドイツのシーメンス社も海外向けは動力分散方式のヴェラロが主力である。
KTXの開発が頭打ちになると韓国鉄道技術研究院(KRRI)は将来の輸出も見据えた動力分散方式の新型車両開発に着手した。設計最高速度430キロ、営業運転速度370キロを目指す「HEMU-430X」で、最高時速400キロの「HEMU-400X」として着手したが、日本の新幹線は1993年に時速425kmを記録しており、目標速度を430キロに引き上げた。
HEMUは2013年に最高時速421.4キロを記録、加速性能も動力集中方式のKTX-山川が停車状態から300キロに達するまで約5分かかるところ、3分53秒で到達する成果を上げた。
安全が最も重視される鉄道は実績が何より重要だ。国内導入に続いて輸出への期待も高まったが、KTXの信号システムは営業最高速度300キロを想定しており、加えて線路や架線の補強など数兆ウォン規模の改修が必要なことが判明した。メディアを対象に行った試乗会でも最高速度は303キロと従来のKTXと変わらなかった。
2007年から2015年までの8年間に1182億ウォン(約129億円)、最終的に2000億ウォン(約218億円)を開発に投じたHEMUは現在、忠清北道五松(チュンチョンブクド・オソン)の車両基地で放置されている。
2018年の平昌五輪に合わせたKTX江陵(カンヌン)線計画でも山間部に強い動力分散方式が検討されたが、実際に採用された「KTX-イウム」の完成は五輪後の2019年で、営業運転開始は3年後の2021年だった。