目に見える国境の撤廃は双方の地域経済に恩恵をもたらす
ジブラルタルの住民約3万8000〜4万人はEESの対象から免除される。陸路の国境フェンスが撤去されることに伴う治安上の懸念を解消するためジブラルタル側は最新鋭の監視ネットワークを構築した。
ライブ顔認識カメラの運用開始、監視カメラ網の大幅な拡充、警察・税関・国境警備人員の増員と最新機器を配備するほか、空港や軍事施設などセンシティブなエリアを保護するため、数メートル内側に新たなセキュリティフェンスを設置する。
旧国境フェンスが取り除かれた後の空間は歩行者や車両が自由に通過できるようになり、英国領の始まりを示すためアスファルトの色が塗り分けられる。目に見える国境を撤廃することは双方の地域経済に大きな恩恵をもたらすと期待されている。
ジブラルタルは世界でも最高水準の1人当たり純所得を誇る
ジブラルタルはオンラインゲーム、金融サービス、海運、観光などを主要産業とし世界でも最高水準の1人当たり純所得を誇る。国境に接するスペイン側のラ・リネア・デ・ラ・コンセプシオンはアンダルシア州でも特に経済的困難に苦しむ都市の一つで、失業率は3割近くに達する。
一方、ジブラルタルはほぼ完全雇用に近く、国境を挟んだ経済格差は大きい。
毎日約1万5000〜1万5500人のスペイン在住労働者が国境を越えてジブラルタルに通勤しており、ジブラルタルの全労働力の半数以上に相当する。朝夕のラッシュ時には長い車列ができ、外交的緊張に伴って検査が強化された際には通過に数時間を要することもあった。
国境が消え人流・物流が自由化される代償としてジブラルタルはこれまで維持してきた低税率モデルを修正し、EU基準に適合する取引税を導入、初年度は15%、将来的には17%に引き上げる。ジブラルタルにおけるEU側の居住権も協定から除外した。
スペインの主権要求がジブラルタル最大の懸念事項
ジブラルタルにとってスペインの主権要求は最大の懸念事項だった。2016年の英国のEU国民投票ではジブラルタル住民の95.9%が「残留」に投票。EU離脱でスペインの主権要求が強まることや、地続きの欧州市場との人流・物流が制限されることへの危機感があった。
今回の歴史的な合意は4者がつまらぬメンツを捨て、地元の実利を優先する形で結実した。これからの英国とEUの関係を占う試金石となる。
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