2026年版の「こども白書」が公表された。子どもに関するさまざまなデータが載っているが、最も目を引くのは自殺統計だ。2025年の小中高校生の自殺者は538人で過去最多だという。少子化が進んでいるのに子どもの自殺は増えていて、国民全体の自殺者の減少傾向と逆行している。
憂慮すべき事態だが、対策を考えるに当たっては、どういう属性で自殺が多い(増えている)のかを観察する必要がある。まずは男女の違いだ。子どもの自殺は2016年頃から増えているが、増分のほとんどは女子で、最近の自殺者は「男子<女子」と以前とは逆転している。女子はSNSで生活態度を不安定化させやすく、それを介してグルーミングや性犯罪の被害に遭いやすい、というような事情があるだろう(「日本全体の自殺者数が減る中で、10代女子の件数が急増している」本サイト、2025年10月29日)。
あと一つは発達段階による違いだ。警察庁の統計では、学校種別の年間自殺者数を集計している。これを同じ年の全児童生徒数で割った数にすれば、学校段階間の比較ができる。<図1>は、2025年の計算結果を棒グラフにしたものだ。

子どもの自殺率は上の学校になるほど高くなるが、高校生を全日制と定時制・通信制に分けると、後者の生徒の自殺率が飛び抜けて高い。同じ高校生でも、自殺率は課程によって大きく違う。4倍以上の開きだ。
定時制や通信制には、重大な問題を抱えた生徒が多く入ってくるためと思われるかもしれないが、そればかりとは言えない。いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)が、警察庁の自殺統計原票を分析したところ、精神科への通院歴や自殺未遂歴といった個人属性を考慮しても、高校生の自殺者に占める定時制・通信制の生徒の割合が年々高まっているという(山寺香「自殺統計から読み解く―通信制高校生徒への支援強化の必要性と、背景に見えた課題」2026年7月7日)。
定時制や通信制は、かつては勤労青年の学びの場だったが、現在では生徒の背景が多様化し、中学校時代の不登校経験者も多くいる。上記の記事は「福祉的なセーフティネットの役割」の必要性を指摘しているが、そのためのリソースは十分と言えるか。社会福祉の立場から支援を行う、スクールソーシャルワーカーによる相談体制を整えている学校の割合は、私立の通信制高校では2割にも満たない(2025年度の文科省調査)。
社会の情報化、また不登校生徒の受け皿への需要もあり、通信制高校の生徒は年々増加している。通信教育では、生徒各人が「個別最適な学び」をしやすいのが利点だが、それが「孤立した学び」に陥らないような配慮が要る。