日本の敗戦といえば、300万人以上の命を奪い、列島が焦土と化したアジア・太平洋戦争がまず想起される。そして多くの日本人にとって戦後とは、平和と繁栄の時代のはずだ。
ところがジャーナリストで元朝日新聞主筆の船橋洋一氏は、「戦後も敗戦だった」と言う。新著『戦後敗戦』(実業之日本社)で、石油危機、プラザ合意、半導体敗戦など戦後の7つの危機を招いた「失敗の本質」が、現在の日本の「敗北」につながったと指摘する。
戦後日本の「失敗の本質」とは何か、船橋氏に聞いた。(聞き手は本誌編集長・長岡義博)
──新著『戦後敗戦』は船橋さんがこれまで取材されてきたことがまとまっている著書だが、一方で日本人にとって敗戦というと、第2次大戦の敗戦がまず思い浮かぶ。戦後も敗戦だったのか。
友人からも「戦後を敗戦と言われてもねえ……いい時代だったからねえ」と言われた。メディアも去年は戦後80年を振り返るさまざまな企画を組んだが、「戦後80年」と言っても、振り返るのは戦前のことばかりで、戦後そのものを振り返ることがほとんどないと感じた。
日本の近現代史の問題はこぞって戦前にあるかのようで、これでいいのかと正直思った。いや、戦後もある段階から実は負け戦が続いたんだ、それを認識しないとこれからも敗戦が続くことになりかねない、と訴えたかった。
戦後80年たって、もう一度「戦後」のパフォーマンスを冷静に評価してみる時に来ているのではないか。経済、エネルギー、財政・金融・通貨、産業、技術、教育、外交、安全保障、それらのどれを取っても日本は今、深刻な状況にある。そのことを改めて認識しなければと思い、あえて『戦後敗戦』と名付けた。