DEI(多様性、公平性、包摂性)は死んだ──。そう言われるようになって久しい。だが、それは誇張だ。DEIを推進する動きは、形を変えてしっかり続いている。

ただ、DEIという表現が死につつあるのは確かだ。米調査会社グラビティ・リサーチによると、フォーチュン100社における「DEI」と「多様性」という言葉の使用は、2023年から1年間で22%減った。25年の米証券取引委員会(SEC)提出書類に「DEI」という言葉が登場する回数も55%減った。

背景には、トランプ政権の大学や行政機関や大企業に対するDEI関連プログラム打ち切りの圧力がある。だが、DEIは別の形で深く根付いている可能性がある。

トムソン・ロイター財団が世界の約3000社を対象に行った調査では、50%以上がDEI目標を公然と掲げていた。また、NPOノー・ワーカー・レフト・ビハインドの調査では、最高多様性責任者の求人は12%減ったが、「人材戦略担当バイスプレジデント」のほか、「組織への帰属意識」「社内経験」関連職の求人は前年比18%増となっている。

つまり企業は、多様性を採用やリーダー育成に組み込むようになったのだ。例えば、ペプシは「DEI戦略」を「成長のための包摂性」に変更し、コールズは最高DEI責任者を最高包摂性・帰属意識責任者に改め、サプライヤーの多様性を拡大した。DEIを再編した企業の62%がプログラムの名称を変更するか、別の取り組みを吸収した。

こうした工夫は従業員の定着に効果を上げているようだ。女性のキャリア支援団体カタリストとニューヨーク大学の調査では、包摂性プログラムがある企業では、従業員が長く勤続する傾向が示された。

皮肉にも、DEIをつぶそうとする政治的圧力は、企業が表面的なスローガンを捨て、DEIを深く根付かせる工夫につながっているようだ。
 

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