<飛び級の導入やサイエンスの英語履修など中高教育、大学入試の改革が必要>

日本の文部科学省は、小中高校生の理系教育に取り組む拠点を全都道府県に整備する方針を打ち出すようです。報道によれば、拠点となる大学などに補助金を交付する新事業を来年度に始めるそうです。拠点として選ばれた大学などには、実験に使う資材の購入費や人件費などとして、選定から5年間、1拠点あたり年間5000万円規模の補助金が交付されるという計画です。

この政策ですが、少し前に打ち出された「ギフテッド教育」とは異なります。ギフテッド教育とは、AIの時代にも、人間を代表して高度な研究や発明や発見を牽引する人材に、中高生の段階で高度な学習機会を与えるものです。これを「第1グループ」と呼ぶのであれば、今回の理系人材育成は、もう少し裾野の広い「第2グループ」と呼ばれる人材の育成策になります。

AIがどんどん優秀になれば、理系分野のような論理を優先する世界は機械化されるので、天才レベル以外の人材は不要になるというような意見もあるようですが、国際的には違う意見が大勢を占めています。AIの時代だからこそ理系人材は必要であり、そこには2つの理由があるとされています。

AI時代にも理系人材は必要

1つは、AIという数量と論理の「怪物」を使いこなすには、やはり人間も数量と論理に強くならなくてはならないということです。裏返して言うのであれば、最先端の科学と数学に強い人材がAIという強力なツールを使いこなすなかで、革新的なイノベーションが連続的に起きていく時代になる、そのような期待があるのです。

もう1つは、純粋知的労働がAIに置き換わった場合には、人間の仕事は「新しい現場仕事」になると言われています。いわゆる「ブルーカラーの復権」ですが、具体的にはスマホ製造ラインの高度なロボットの「エラーやトラブルの解決をして回る仕事」であったり、巨大なデータセンターの温度や電源を高度に管理するインフラを設置してメンテする人材などになります。要するに、現場仕事といっても、サイエンスの基本と応用を理解した理系人材に他なりません。

つまり、AIの時代には天才的ではないが、実務能力に優れており、サイエンスと数学のかなり高度なスキルを持った人材はますます必要になるのです。国のレベルとしても、そうした人材を育てていかなければなりません。この点、つまり天才ではないが実務スキルのある「第2グループ」をどう育てていったらいいかを、18歳の時点での「期待される人物像」を描きながら解き明かした『世界の一流は「子ども」に何を教えているのか』(冷泉彰彦著、クロスメディア・パブリッシング刊)を、このたび出版しました。読者の皆さまには是非、ご一読をいただければと思います。

『世界の一流は「子ども」に何を教えているのか』
冷泉彰彦著
(クロスメディア・パブリッシング刊)

大学入試改革も必須課題
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