農務省の推計によると、ラセンウジバエをアメリカから根絶することで、畜産業は年間9億ドルの損失を回避できる。

6月1日にはテキサス州のドン・マクラフリン州下院議員が、同州の州境から1マイルも離れていない地域でラセンウジバエが確認されたとして、緊急対策を呼びかけた。

農務省と疾病対策センター(CDC)は、ラセンウジバエの北上については緊密な監視を続けていると強調。アメリカから数百マイル以内の地域での検出に関しては定期的に情報を更新し、メキシコ当局と連携して拡大防止に努めているとした。

連邦政府や州政府はアメリカへの侵入を防ぐため、不妊化したオスを放すなどの対策を講じている。このオスを野生のメスと交尾させることで繁殖を抑え、個体数の減少につなげる狙い。

さらに、発生地域からの家畜の輸入を制限し、関係機関と協力して発生状況を監視するなどしてラセンウジバエの拡散を防いでいる。リスクは主に、動物の移動に起因する。感染した家畜や野生動物、ペットなどを通じて幼虫が地理的に拡散する可能性がある。

ラセンウジバエは主に家畜や野生動物に寄生するが、まれに人間にも寄生することがある。ハエウジ症と呼ばれるこの症例では、ハエが傷口や体の開口部に卵を産み付け、孵化した幼虫が組織に潜り込んで生きた肉を餌にする。痛みを伴う傷口は徐々に悪化して、治療せずに放置すれば重症化して組織の損傷が広がったり二次感染を引き起こしたりすることもある。

最も懸念されるのは畜産業への影響だ。特に牛や羊、馬、鹿などの恒温動物が狙われやすい。治療が遅れれば衰弱したり死んだりすることもあり、農場や牧場の経済損失につながる。

流行が再燃すれば、家畜生産に混乱が生じて貿易制限の引き金となり、多額をかけた根絶対策が必要になる可能性もある。アメリカ政府は、たとえ小規模な流行であっても経済やサプライチェーンに大きな打撃を与え得るとして、農業の保護を最優先する姿勢を強調している。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 サッカーW杯 日本が優勝する日
2026年6月9日号(6月2日発売)は「日本が優勝する日」特集。

Jリーグ発足後、飛躍的に進化した日本サッカー。W杯の頂点に挑み世界を驚かせる時が来た

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます