本書に書かれていないことから見えてくるアメリカの猛毒
本書に書かれていないことをまとめると、下記のようになる。
・本書ではアメリカ中心の世界が前提になっているため、全ての国はアメリカより下位であり、対等な議論や協力は考えられない。
・アメリカは誰にも感謝しない。
・偏った人文系知見に基づいているため、安全保障上の重要な課題をいくつも見落としている。
・人類全体の危機については考えていない。アメリカが安泰なら世界も安泰であり、アメリカが滅ぶなら世界も滅ぶという発想らしい。
・エンジニアについて繰り返し言及はあるが、エンジニアリング的な発想に基づく検証のない人文的精神論に終始している。
「テクノファシズム」と呼んでもよいのかもしれないが、それ以上にあまりにも現実離れした本書が、世界的に影響力を持ちつつある企業のCEOによって書かれているのは怖い。おそらく自分の知らないことは重要ではなく、自分の知っていることは重要なことだと考えているのだろう。
そうでなければ、あれほど大量のうんちくを語ったりしない。しつこいようだが、パランティアのCEOが安全保障を語る際にCBRN、サイバー攻撃、量子と宇宙についてほとんど触れていないのはおかしいというより、欠けている部分で致命的に劣位になった場合にどうするつもりなのか、という不安がわいてくる。
現実を見ない楽観的な人の思考を「お花畑」と呼ぶことがあるが、「テクノロジカル・リパブリック」はエンジニアでない人が「エンジニア畑」な発想で書いた本だと言える。
正直、これほど視野の狭い人がアメリカと世界に対して多大な影響力を行使するシステムを提供しているのはちょっと、いやかなり怖い。
トランプに象徴されるアメリカの猛毒がアメリカの産業界にも広がっている。