「大いなる入れ替え」がアメリカに渡る
そしてこの概念は、極右の陰謀論「大いなる入れ替え、または大置換」と密接に関連していると言われる。
出生率の低下とアラブ系やアフリカからの移民の流入によって、西洋文明が不可逆的な衰退の脅威にさらされている、そしてこれには具体的な計画が存在する、とする考えだ。ルノー・カミュというフランス作家が2011年に出版した『Le Grand Remplacement』という著書が元になっている。
この概念は、白人至上主義を掲げる過激なアイデンティティ運動の間で長い間支持されてきたものだ。それが特に2015年に始まった移民危機以降、議会に議席を持つような極右政党によって徐々に採用されてきた。
この概念に従えば、海外に居住する日本人のすべて──学生、駐在員からビジネスの居住者、定住者までが排除の対象となるのだろう。
批判者は「民族浄化のソフトな形態だ」と非難している。
そしてこの思想はアメリカにも伝わった。ドナルド・トランプ大統領、J・D・バンス副大統領、そしてイーロン・マスクは、公に「大置換」を支持したわけではないが、レトリックや政治的な考え方には共通点がある。カミュがMAGA派の重鎮に与えた影響は、『ペストをもたらした男(L'homme par qui la peste arriva、注:カミュのこと)』(ガスパール・デレム、オリヴィエ・フェイ著)に詳しく説明されているという。
このような考えは欧州では陰謀論とみなされているが、アメリカでは強力な権限を持つ国家元首が口にしているせいだろうか、陰謀論とする派と、もはやイデオロギーであるという派に分かれていると聞く。
「大置換」の話を聞くと、自分の肌の色を意識してしまう。ないとは思いたいが、もし米欧が極の極に移行したら、アパルトヘイトの時代と同じように「日本人は名誉白人」と扱われることになるのだろうか、それとも排斥されるのだろうか。
極右を襲った苦難の連続
欧州の極右はまるで「踏み絵」を踏まされるように、欧州に降りかかった激動の影響を直接受けてきた。
2015〜16年の移民危機は極右が活気づいて伸長した時期だ。
次は2016年のブレグジット(英国のEU離脱)である。2020年末に移行が完了して以来、イギリスは長期的な経済の退行に悩んでいる。GDPはブレグジットがなかった場合より4〜8%低いと言われており、特に製造業や中小企業への打撃が深刻だ。
この様子を目の当たりにしたEU内では、極右による「EU離脱」や離脱をほのめかす発言が激減した。その代わり、中にいて反抗を示しEUを弱体化させる姿勢が一般的になった。だからこそオルバンはモデルとなった。つまり、「EUありきの極右」と大きく変化したことになる。