ヒズボラは医療や保健に関わる組織も傘下に持つ
何台も救急車が出動していくなか、レバノン政府の管轄下にある救急部隊を追った。ゴーストタウンと化したナバティーエの街を、猛スピードで救急部隊の車両が走る。
5万人の住民の大半が避難したナバティーエ市には、なお約800人の住民が残っている。移動や、避難先の部屋やテントを手に入れるお金もなく、家族に病人や高齢者がいるなどの事情で、避難できないこともあるからだ。
大通りを抜け、細い道を車で5分ほど走った爆撃現場の1つにたどり着いた。なんの変哲もない住宅街だ。坂道に既にいくつもの救急隊の車が止まっていた。
コンクリートの破片が飛び散った通りを下って歩くと、その先にあった建物はほぼ原形を失っていた。あたりの木々は粉塵で緑の葉が灰色に覆われている。
赤い制服を着た赤十字の救急隊員が、住民の1人とみられる男性の肩を抱いていた。
「撮らないで」
赤十字の隊員たちは前回は快く取材に応じてくれたが、多くの隊員がこの地域の出身である。そのため、被害者が知人や友人であることが多く、時には家族や親戚である場合もある。
赤十字の隊員たちが、瓦礫の間の狭い空間に入り、生存者の有無を確認している。
その奥では、「イスラム保健協会」の隊員たちが、崩壊した建物の上で捜索活動を行っていた。イスラム保健協会は、イスラエル軍が現在標的としているヒズボラと関連する組織である。ヒズボラは政治・武装組織でもあると同時に、医療や保健に関わる組織も傘下に持っている。
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