<教員の学歴要件を修士に引き上げ、在職中の大学院研修制度の拡充も図るべき>

「三歩下がって師の影を踏まず」とはいつの時代の格言か......。教員に対する敬意は時代と共に下がってきており、教員をまるで自分の下僕のように見なす「モンスターペアレンツ」も増殖している。

昔は、未知の知識を教えてくれる存在として教員には敬意が表されていた。しかし、インターネットなどで知識を得られる現在では、そのようなことはない。国民の高学歴化により、教員と保護者の学歴差も縮まっていて、地域の「知識人」として敬われる条件はなくなっている。

フランスの社会学者デュルケムは、教員には道徳的権威が不可欠だと述べたが、その基盤となるのは学識を多く身に付けていることだ。それを自他に対し客観的に示してくれるのが「学歴」だと言える。その目安として大学卒の割合に注目されることが多いが、国民の高学歴化が進んでいる今の日本の場合、一段上の大学院卒の割合に着眼するのがいいだろう。

IEA(国際教育到達度評価学会)の調査「TIMSS 2023」によると、日本の小学校教員の大学院卒率は5%。OECDの「PIAAC 2022-2023」によると、30~40代の既婚者の大学院卒率も同じく5%。教員の大学院卒率は低いと同時に、保護者との差もない。他国ではどうか。<図1>のグラフを見てほしい。

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横軸に保護者、縦軸に小学校教員の大学院卒率をとった座標上に、日本を含む26カ国のドットを配置したものだ。日本は両軸とも低いので、原点の近くにある。教育大国と言われるものの、大学院の普及度は他国と比較して低いようだ。

斜線は均等線で、この線より上にある国は、保護者より教員の大学院卒率が高い国だ。26カ国中19カ国が該当し、上にある5カ国は保護者に大きく差をつけている。フィンランドでは保護者が31%であるのに対し教員では90%と、3倍もの開きがある。この国では大学院修士課程までが教員養成に組み込まれているからなのだが、高度専門職としての自負を教員に持たせるのに寄与しているだろう。

都心部では保護者の方が大学院卒の比率が高い